第115回 看護師国家試験 午前 問112 解説
📝 問題
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。 Aさん(24歳、初妊婦、事務職)は妊娠8週であり、両親と3人で暮らしている。パートナー(24歳、大学院2年生)は就職が決まっており、Aさんと結婚する予定である。 Aさんは「特に朝の気持ち悪さがつらくて、あまり食べられません。ご飯が炊き上がるにおいだけで吐き気がします」と話す。妊娠経過は順調である。 Aさんへの食事指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ つわりの時期は食べられるものを食べられるときに、が原則である。
つわりは妊娠5〜6週ごろに始まり、12〜16週ごろには自然に軽くなることが多い一過性の症状である。
この時期に必要な妊婦のエネルギー付加量は1日わずか+50kcalにすぎない。 栄養バランスを整えることよりも、脱水を防ぎ、食べられるものを無理なく口にすることが優先される。
Aさんは炊きたてのご飯のにおいで吐き気が出ており、食べられるタイミングも限られている。「食べられるものを、食べられるときに」でよい。
つわりの指導では、「食べなければ赤ちゃんに悪い」と思い込んでいる妊婦の罪悪感をやわらげることが、実はいちばん大切な看護になる。
- 1
「食事は温めましょう」不正解
温めるとにおいが立ちのぼり悪心を誘う。Aさんは炊飯のにおいで吐き気が出ており、むしろ冷ましてにおいを抑えるほうが食べやすい。
- 2
「空腹の状態にしましょう」不正解
空腹はかえって悪心を強める。少量頻回にとり、起床時に枕元でクラッカーなどを口にするなど、空腹の時間をつくらない工夫が有効である。
- 3
「食べたいときに食べましょう」正解
正しい。つわりの時期は栄養バランスより「食べられるものを食べられるときに」が原則。一時的に偏っても胎児の発育に大きな影響はない。
- 4
「赤ちゃんのために栄養を考えて食べましょう」不正解
「赤ちゃんのために」という言葉は妊婦に強い罪悪感とプレッシャーを与える。食べられないこと自体に悩んでいるAさんへの声かけとして不適切である。
📚 混同しやすいので注意
つわりと妊娠悪阻は地続きだが、治療が要るかどうかが違う。受診の目安を具体的に伝えることが看護になる。
- 妊娠期のエネルギー付加量=初期+50kcal、中期+250kcal、後期+450kcal、授乳期+350kcal。
- 妊娠を計画する時期〜妊娠初期は、神経管閉鎖障害のリスクを下げるため葉酸を1日400μg付加する。
- 食事の工夫=冷たいもの・においの少ないもの、少量頻回、起床時に軽く口にする、水分をこまめに。
| 項目 | つわり | 妊娠悪阻 |
|---|---|---|
| 時期 | 妊娠5〜6週に始まり12〜16週頃に軽快 | つわりが悪化して移行 |
| 経口摂取 | 食べられるものはある | 頻回の嘔吐で経口摂取が困難 |
| 体重 | 大きな減少はない | 妊娠前体重の5%以上減少 |
| 検査所見 | 特記なし | 脱水、電解質異常、尿ケトン体陽性 |
| 治療 | 生活・食事の工夫 | 入院・輸液。ビタミンB1を補いWernicke〈ウェルニッケ〉脳症を予防 |
参考: 産婦人科診療ガイドライン産科編/日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について