第110回 看護師国家試験 午後 問112 解説
📝 問題
Aさん(35歳、男性)は1人暮らし。両親は他県に住んでいる。30歳のときに双極性障害と診断され、これまでに4回の入退院を繰り返している。給料をインターネットゲームの利用料金で度々使い果たし、それが原因で両親と何度も口論になったことがある。仕事では同僚とトラブルを起こすたびに転職を繰り返しており、今回も同僚と口論になり自ら退職した。Aさんは「前の職場の同僚に嫌がらせをしてやる」と母親に電話をかけ、心配した両親が一緒に精神科病院を受診した。診察室では多弁で大きな声を出し、椅子を蹴るなどの行為がみられた。医師の診察の結果、入院して治療することになった。入院時、AさんのBMIは29.5。この数日は食事をとっていなかった。入院後も興奮状態がおさまらず、壁に頭を打ちつけはじめたため、医師から抗精神病薬の点滴静脈内注射と身体的拘束の指示がでた。 身体的拘束中のAさんの看護で正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
2・3
💡 解説
✅ 身体的拘束中は肺血栓塞栓症の予防と、頻回に様子を見に来ることを伝える対応が正しい。
身体的拘束の間は同じ姿勢のまま動けないため、深部静脈血栓ができ、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を起こす危険がある。Aさんは入院時のBMIが29.5で、この数日は食事をとっておらず、肥満と脱水という血栓ができやすい条件が重なっている。下肢の運動・弾性ストッキング・水分補給・観察による予防が欠かせない。 また拘束は強い不安と孤立感を与えるので、頻回に様子を見に来ることを伝え、安心感を与えながら全身状態を観察する。
水分摂取を最小限にするのは逆で、脱水は血栓をつくりやすくするため、むしろ十分な水分補給が必要である。
拘束の原因になった行為を一緒に振り返るのは、興奮が続いている今は時期尚早である。 身体的拘束は医師の指示によって開始も解除も決まり、看護師の判断だけで外すことはできない(精神保健福祉法上の行動制限に該当)。 拘束は最小限・一時的にとどめ、頻回の観察と早期解除の検討が原則である。
深部静脈血栓とは
足の奥を走る静脈にできる血の塊。長く同じ姿勢でいると起こりやすく、はがれて肺へ飛ぶと肺血栓塞栓症になる。
- 1
水分摂取は最小限にする。不正解
脱水は血栓形成を助長するため水分摂取を最小限にするのは誤り。十分な補給が必要。
- 2
肺血栓塞栓症を予防する。正解
不動による深部静脈血栓・肺血栓塞栓症の予防(運動・水分・観察)が不可欠。
- 3
頻回に様子を見に来ることを伝える。正解
拘束は強い不安・孤立感を招くため、頻回に様子を見に来ることを伝え安心と観察を図る。
- 4
身体的拘束の原因となった行為を一緒に振り返る。不正解
興奮状態のさなかに拘束原因を一緒に振り返るのは時期尚早で不適切。
- 5
興奮状態が落ち着いたら看護師の判断で身体的拘束を解除する。不正解
身体的拘束の解除は医師の指示によるもので、看護師の判断だけで解除はできない。
📚 国試でよく狙われるところ
身体的拘束は「誰が決めるか」と「体に何が起こるか」の2点で問われる。開始も解除も精神保健指定医の判断、合併症の筆頭は肺血栓塞栓症と覚えよう。
- 身体的拘束と12時間を超える隔離は精神保健指定医の判断が必要で、理由と時間を診療録に記載する
- 拘束中は頻回の観察と定期的な診察を行い、早期解除を検討し続ける
- 合併症=深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症、皮膚障害、関節拘縮、誤嚥、脱水、循環障害
- 予防=十分な水分補給、下肢の他動運動・弾性ストッキング、体位変換、拘束具の当たり方の確認
参考: 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について