第110回 看護師国家試験 午後 問111 解説
📝 問題
Aさん(32歳、男性)は覚せい剤の薬物依存症の治療のため精神科病院に入院した。入院後1か月、Aさんは「正直に言うと、今も覚せい剤を使いたいという気持ちがある。もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」と悩みを打ち明けた。 Aさんの状態のアセスメントとして適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 「使いたい気持ちを抑えきれない」という渇望は精神依存を示す。
Aさんは「今も覚せい剤を使いたい気持ちがある。誘いがあったら抑えきれない」と、薬物への強い欲求(渇望)を訴えている。 薬物を求めずにはいられないこの状態が精神依存で、覚せい剤は精神依存が強い薬物として知られる。
身体依存は、薬物が体から抜けたときに振戦・発汗・けいれんなどの離脱(退薬)症状が出る状態で、覚せい剤ではこれが乏しい。Aさんの訴えは身体症状ではなく「使いたい」という心理的渇望である。 否認は問題そのものを認めない心の動き、共依存は周囲の人が患者に過度に巻き込まれる関係である。 身体依存・離脱症状・否認・共依存のいずれも、「使いたい」という渇望そのものを指す言葉ではない。
共依存とは
家族などの周囲の人が、本人の飲酒や薬物使用の後始末を引き受け続け、結果として依存を支えてしまう関係。世話を焼くことが自分の役割になっている状態を指す。
- 1
否認不正解
否認は問題を認めない状態だが、Aさんは渇望を正直に認めており該当しない。
- 2
共依存不正解
共依存は周囲が患者に過度に巻き込まれる関係性を指し、本人の渇望の説明ではない。
- 3
身体依存不正解
身体依存は離脱症状を伴う身体的な依存で、Aさんの訴えは心理的渇望であり該当しない。
- 4
精神依存正解
薬物を求めずにいられない強い渇望・使用欲求は精神依存である。覚せい剤は精神依存が強い。
- 5
離脱症状不正解
離脱症状は退薬時の身体症状で、渇望そのものを指す語ではない。
📚 混同しやすいので注意
精神依存・身体依存・耐性は、言葉の意味を入れ替えて問われる。渇望=精神依存、離脱症状=身体依存と対にして覚えよう。
- 精神依存=薬物を求めずにいられない渇望・強迫的な使用欲求
- 身体依存=薬物が切れると離脱(退薬)症状が現れる状態
- 耐性=同じ効果を得るために必要な量が次第に増えること
| 物質 | 精神依存 | 身体依存 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 覚せい剤 | 強い | 弱い | 幻覚・妄想、断薬後のフラッシュバック |
| アルコール | 強い | 強い | 離脱時に振戦・けいれん・振戦せん妄 |
| オピオイド(モルヒネなど) | 強い | 強い | 縮瞳・便秘・呼吸抑制 |
| ニコチン | 強い | あり | イライラ・集中困難などの離脱症状 |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について