第110回 看護師国家試験 午後 問113 解説
📝 問題
Aさん(35歳、男性)は双極性障害で入院した。入院後1週、身体的拘束は解除された。Aさんは常に動き回り、他の患者への過干渉が続いている。食事中に立ち上がりホールから出ていこうとするため、看護師が止めると強い口調で言い返してくる。Aさんは「ゲーム関連の仕事を探したい。早く退院させろ」と1日に何度も看護師に訴えるが、主治医は退院を許可していない。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 躁状態で多動・過干渉が続くAさんには、休息できる場所へ誘導して刺激を減らす。
Aさんは双極性障害の躁状態にあり、常に動き回って他の患者への過干渉が続き、じっとしていられない。 躁状態では過活動で消耗しやすく、他の患者とのトラブルも招くため、刺激の少ない休息できる場所へ誘導して興奮を鎮め、心身の休息を確保する。
躁状態では判断力や自制が下がっているため、過干渉の理由を確かめる、退院後の同居を提案する、仕事のスキルを話し合うのは、いずれも今は刺激になるだけで冷静な検討につながらない。落ち着いてから取り組む課題である。
躁状態の看護では、消耗・脱水・トラブルを防ぐ環境調整が中心になる。 強く制止すると反発を招くため、穏やかに誘導する。
躁状態とは
気分が高ぶって活動が止まらなくなる状態。眠らなくても平気に感じ、多弁・浪費・他人への干渉が増える一方で、本人には困っている自覚が乏しい。
- 1
休息できる場所へ誘導する。正解
躁状態の過活動による消耗やトラブルを防ぐため、刺激の少ない休息できる場所へ誘導する。
- 2
過干渉となる理由を確認する。不正解
躁状態のさなかに過干渉の理由を確認しても冷静な検討は難しく、優先されない。
- 3
退院後は家族と暮らすように提案する。不正解
退院後の同居提案はこの時期の優先事項ではない。
- 4
仕事に必要なスキルについて話し合う。不正解
仕事のスキルの話し合いは状態が落ち着いてからの課題で、今は刺激になりうる。
📚 関わり方と薬の注意点
躁状態は「今この場での関わり方」と「炭酸リチウムの注意点」の2つで問われる。関わりの判断軸は、刺激を減らす・消耗を防ぐ・対決しないの3つである。
- 過活動で食事・睡眠がとれず、脱水・疲労困憊に陥りやすい
- 食事は手に持って食べられる高エネルギー・高蛋白のものを用意し、水分をこまめに勧める
- 対決せず穏やかに、短く具体的に伝える。刺激の少ない静かな環境へ誘導する
- 炭酸リチウムは有効血中濃度(維持量でおおむね0.6〜1.2mEq/L)と中毒域が近く、定期的な血中濃度の測定が欠かせない
- リチウム中毒の徴候は振戦・嘔吐・下痢・運動失調。脱水や発熱では血中濃度が上がりやすい
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について