第110回 看護師国家試験 午前 問86 解説
📝 問題
悪性貧血で正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
4・5
💡 解説
✅ 悪性貧血では胃癌の発症率が高く、自己免疫機序で発症する
悪性貧血は、胃壁細胞や内因子に対する自己抗体が産生される自己免疫機序(自己免疫性萎縮性胃炎)により内因子が欠乏し、ビタミンB₁₂の吸収障害をきたして生じる巨赤芽球性貧血である。 背景に萎縮性胃炎があるため、胃癌の発症率も高い。
他の選択肢は誤りである。黄疸は溶血性貧血で生じやすい所見であり、悪性貧血の典型ではない(ただしビタミンB₁₂欠乏では無効造血により軽度上昇することはあるが、代表的所見ではない)。異食症は鉄欠乏性貧血でみられる特徴である。悪性貧血は小球性ではなく大球性(MCV高値)の貧血である。
「悪性貧血=ビタミンB₁₂欠乏・大球性・内因子欠乏・自己免疫・萎縮性胃炎・ハンター舌炎・神経症状」と押さえておくとよい。
内因子とは
胃の壁細胞から出るタンパク。ビタミンB₁₂とくっついて回腸まで運び、そこで吸収させる働きをもつ。
MCV〈エムシーブイ〉とは
赤血球1個あたりの平均的な大きさを表す検査値。貧血の原因をしぼり込む最初の手がかりになる。
- 1
黄疸が生じる。不正解
黄疸は主に溶血性貧血で生じやすく、悪性貧血の代表的所見とはいえない。
- 2
異食症が出現する。不正解
異食症は鉄欠乏性貧血でみられる特徴であり、悪性貧血ではない。
- 3
小球性の貧血である。不正解
悪性貧血は小球性ではなく大球性(巨赤芽球性)の貧血である。
- 4
胃癌の発症率が高い。正解
背景の自己免疫性萎縮性胃炎により胃癌の発症率が高い。
- 5
自己免疫機序で発症する。正解
内因子・胃壁細胞に対する自己抗体による自己免疫機序で発症する。
📚 混同しやすいので注意
貧血は赤血球の大きさ(MCV)で3つに分けられ、分類と代表疾患を入れ替えて問われる。悪性貧血は「大球性・ビタミンB₁₂欠乏・胃の萎縮」の3点で見分けよう。 ビタミンB₁₂欠乏では神経症状(下肢のしびれ、深部感覚障害、歩行障害)とハンター舌炎を伴うが、葉酸欠乏では神経症状を伴わない。 悪性貧血の治療はビタミンB₁₂の非経口(筋肉内)投与で、経口投与では内因子がないため吸収されない。
| 分類 | MCV(fL) | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 小球性低色素性貧血 | 80未満 | 鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミア、慢性炎症に伴う貧血 |
| 正球性正色素性貧血 | 80〜100 | 再生不良性貧血、溶血性貧血、腎性貧血、急性出血 |
| 大球性貧血 | 101以上 | 巨赤芽球性貧血(ビタミンB₁₂欠乏・葉酸欠乏)、骨髄異形成症候群、肝疾患 |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について