第115回 看護師国家試験 午後 問83 解説
📝 問題
基礎疾患のない患者の痔瘻について正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
2・3
💡 解説
✅ 痔瘻は手術が原則で、長期経過例では痔瘻癌が発生することがある。
痔瘻は、歯状線にある肛門陰窩(肛門小窩)から細菌が肛門腺に入って感染し、肛門周囲膿瘍をつくり、その膿が自壊または切開排膿された後に瘻管(トンネル)が残った状態である。瘻管は上皮化して残るため自然には治癒しない。 根治には手術(瘻管切開開放術・括約筋温存術・シートン法)が原則となる。
もう一つの要点は、長期間放置された痔瘻から痔瘻癌(粘液を産生する腺癌が多い)が発生しうることである。頻度は高くないが、10年以上経過した複雑な痔瘻では注意が必要で、これも早期の手術を勧める理由になる。
痔瘻は後天性の感染性疾患であり、静脈叢のうっ血で生じる痔核とも、骨盤底筋の脆弱で生じる骨盤臓器脱・腹圧性尿失禁とも成り立ちが異なる。 なお設問が「基礎疾患のない患者の」と断っているのは、難治性・複雑な痔瘻を高率に合併するクローン病を除いて考えさせるためである。
- 1
先天性の疾患である。不正解
痔瘻は、肛門陰窩から肛門腺への細菌感染に始まる後天性の疾患である(下痢や免疫低下が誘因になる)。乳児にみられる乳児痔瘻は経過が異なるが、これも先天奇形ではない。
- 2
悪性腫瘍の発生がある。正解
長期間経過した痔瘻からは、まれに痔瘻癌(粘液産生性の腺癌が多い)が発生する。10年以上続く複雑痔瘻で、分泌物の増加・硬結・持続する疼痛が現れたときには悪性化を疑う。
- 3
手術療法が原則である。正解
瘻管は上皮化して残るため自然閉鎖せず、薬物療法だけでは治らない。根治には瘻管を処理する手術が原則で、瘻管切開開放術、括約筋温存術、シートン法(ゴムひもで徐々に切開する方法)などが病型に応じて選択される。急性の肛門周囲膿瘍の段階では、まず切開排膿を行う。
- 4
上下直腸静脈の静脈瘤である。不正解
直腸肛門部の静脈叢がうっ血・拡張して生じるのは痔核である。歯状線より上にできるのが内痔核(痛みのない出血・脱出)、下にできるのが外痔核(強い痛み)で、痔瘻とは別の疾患である。
- 5
骨盤底筋群の虚弱が原因である。不正解
骨盤底筋群の脆弱化は、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)や腹圧性尿失禁の原因である。痔瘻の原因は肛門腺の感染であり、骨盤底筋の筋力とは関係しない。
📚 これとセットで理解しよう
クローン病では、難治性・複雑な痔瘻を高率に合併する(痔瘻が先に見つかってクローン病の診断につながることもある)。若年者で再発を繰り返す複雑痔瘻では、下痢・腹痛・体重減少・口内アフタなど腸管症状の有無を確認する。
| 疾患 | 成り立ち | 主な症状 | 主な治療 |
|---|---|---|---|
| 痔核(いぼ痔) | 直腸肛門部の静脈叢のうっ血・拡張 | 内痔核=痛みのない出血・脱出、外痔核=強い痛み | 排便コントロール、坐薬・軟膏、硬化療法、結紮切除術 |
| 裂肛(切れ痔) | 硬便による肛門上皮の裂創(好発は後方) | 排便時の鋭い痛みと少量の出血 | 便性の改善、軟膏、慢性化・肛門狭窄では手術 |
| 痔瘻(あな痔) | 肛門腺の感染→肛門周囲膿瘍→瘻管形成 | 肛門周囲の腫脹・拍動痛・発熱、膿の排出 | 膿瘍期は切開排膿、根治は手術 |
参考: 日本大腸肛門病学会「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱 診療ガイドライン」/系統看護学講座 成人看護学(消化器)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について