第115回 看護師国家試験 午後 問57 解説
📝 問題
加齢による「もの忘れ」はどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 友人の名前を思い出すのに時間がかかるのは、加齢による生理的なもの忘れである。
加齢による「もの忘れ」と認知症の記憶障害は、忘れるのが体験の一部か、体験そのものかで区別する。 加齢によるもの忘れは、体験の一部(名前・置き場所など)を忘れるがヒントがあれば思い出せる、忘れたことの自覚がある、日常生活に支障がない、ほとんど進行しないという特徴をもつ。 「友人の顔を見て名前を思い出すのに時間がかかった」のは、顔も相手との関係も覚えていて想起に時間がかかっただけなので、生理的な変化である。
一方、認知症では体験そのものを丸ごと忘れ、ヒントを出しても思い出せない。 「夕食を食べた」「電話がかかってきた」という出来事全体が抜け落ちる忘れ方や、今いる場所が分からない見当識障害は、いずれも認知症を示唆する。
- 1
昨晩、夕食を食べたことを覚えていない。不正解
夕食を食べたという体験そのものが抜け落ちている。ヒントを与えても思い出せないことが多く、認知症でみられる近時記憶の障害を示唆する。
- 2
家族から電話がかかってきたことを忘れてしまった。不正解
電話がかかってきたという出来事全体を忘れており、加齢によるもの忘れの範囲を超える。用件が伝わらない、約束が果たせないなど生活上の支障にもつながる。
- 3
友人の顔を見て名前を思い出すのに時間がかかった。正解
顔は認識でき、相手が友人であることも分かっていて、名前の想起だけが遅れている。加齢に伴う想起速度の低下であり、後から思い出せることが多い。
- 4
買い物に出たが、自分が今どこにいるのか分からない。不正解
自分が今どこにいるか分からないのは場所の見当識障害であり、加齢によるもの忘れでは起こらない。帰宅困難や道に迷う行動につながる危険な症状である。
📚 混同しやすいので注意
加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れは、忘れ方・ヒント・自覚・生活への影響・経過・見当識の6点を入れ替えて問われる。表の左右を見比べて覚えよう。
| 項目 | 加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ |
|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験の一部を忘れる | 体験全体を忘れる |
| ヒント | 手がかりがあれば思い出せる | 手がかりがあっても思い出せない |
| 自覚 | 忘れたことを自覚している | 自覚に乏しい |
| 日常生活 | 支障はない | 支障をきたす |
| 経過 | ほとんど進行しない | 徐々に進行する |
| 見当識・判断力 | 保たれる | 障害される |
参考: 認知症疾患診療ガイドライン(日本神経学会)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について