第115回 看護師国家試験 午後 問46 解説
📝 問題
Aさん(58歳、男性)は農作業中に有機リン系殺虫剤を散布していたところ、急な嘔気と頭痛、呼吸困難が出現したため救急搬送された。搬入時、呼吸は促迫で流涎があり、縮瞳が認められた。 Aさんに直ちに投与される薬剤はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 有機リン中毒に直ちに投与されるのはアトロピン硫酸塩水和物である。
有機リン系殺虫剤はコリンエステラーゼを阻害し、神経終末にアセチルコリンが蓄積することで中毒症状を起こす。Aさんにみられた縮瞳・流涎・気道分泌亢進による呼吸困難は、アセチルコリンがムスカリン受容体を過剰に刺激した典型的な所見である。 アトロピンはムスカリン受容体を遮断してこれらの症状を速やかに改善するため、直ちに投与される。
もう1つの解毒薬がプラリドキシムヨウ化物〈PAM〉で、阻害されたコリンエステラーゼそのものを再賦活する。ただし時間が経つと効かなくなるため、できるだけ早く投与する。 アトロピンは症状を抑える薬、PAMは酵素を元に戻す薬、と役割を分けて覚える。
- 1
ビタミンK製剤不正解
ビタミンK製剤は、ワルファリンやクマリン系殺鼠剤による抗凝固作用を拮抗する薬剤であり、有機リン中毒には無効である。
- 2
オキシコドン塩酸塩不正解
オキシコドン塩酸塩は強オピオイド鎮痛薬で、それ自体が呼吸抑制と縮瞳を起こす。有機リン中毒の呼吸状態をさらに悪化させるため用いない。
- 3
バンコマイシン塩酸塩不正解
バンコマイシン塩酸塩はMRSAなどグラム陽性菌に用いる抗菌薬であり、中毒に対する解毒作用はない。
- 4
アトロピン硫酸塩水和物正解
アトロピンは抗コリン薬としてムスカリン受容体を遮断し、気道分泌亢進・流涎・徐脈・縮瞳などのムスカリン様症状を改善する。とくに気道分泌の抑制は、窒息と呼吸不全の回避に直結する。
📚 国試でよく狙われるところ
有機リン中毒の症状は、ムスカリン様・ニコチン様・中枢神経のどれに入るかを入れ替えて問われる。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| ムスカリン様症状 | 縮瞳、流涎、流涙、発汗、気道分泌亢進、徐脈、嘔吐・下痢、尿失禁 |
| ニコチン様症状 | 線維束攣縮、筋力低下、頻脈、血圧上昇 |
| 中枢神経症状 | 頭痛、めまい、不穏、けいれん、意識障害、呼吸中枢の抑制 |
ムスカリン様症状は流涎・流涙・排尿・排便・消化管症状・嘔吐の頭文字でSLUDGEと覚えるとよい。
参考: 急性中毒標準診療ガイド(日本中毒学会編)/日本中毒情報センター 中毒情報
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について