第115回 看護師国家試験 午前 問94 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。 Aさん(56歳、男性、会社員)は胸部食道癌と診断され、開胸開腹下で食道切除再建術を受けることになった。 病状と手術の説明を聞き「酒もほとんど飲まないのに、食道癌になっちゃうんですね」と落ち込んだ様子で「早くよくなりたい。20歳から毎日20本吸っていたタバコも手術が決まってやめました」と話した。 身体所見:身長168cm、体重54kg、BMI19。 血液所見:Hb13.6g/dL、Ht41.4%、血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒、総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、空腹時血糖102mg/dL、HbA1c4.8%。 呼吸機能所見:%VC78%、FEV1% 67%。 術前のAさんの状況から、術後に最も起こる可能性の高い合併症はどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 長期の喫煙と混合性換気障害があり、術後に最も起こりやすい合併症は無気肺。
Aさんの呼吸機能は%VC 78%(80%未満で拘束性換気障害)、FEV1% 67%(70%未満で閉塞性換気障害)で、両方に当てはまる混合性換気障害である。
さらに20歳から56歳まで1日20本の喫煙(Brinkman〈ブリンクマン〉指数=20×36=720)があり、気道の線毛運動が落ちて分泌物が増えている。
そこへ開胸開腹という侵襲のとても大きい手術が加わる。術後は創部痛・呼吸筋の障害・臥床によって咳嗽力と換気量が落ちる。この条件がそろうと痰が末梢の気道をふさぎ、無気肺から肺炎へ進みやすい。食道癌の術後合併症でも、呼吸器合併症の頻度が最も高い。
この問題は、並んだ検査値のうち突出して悪いのはどこかを見つけるタイプである。
- 1
出血不正解
血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒はいずれも基準範囲内で、止血機能は保たれている。
- 2
無気肺正解
正しい。混合性換気障害と36年間の喫煙歴に、開胸操作・創部痛・臥床が加わり、喀痰の貯留による無気肺が最も起こりやすい。
- 3
縫合不全不正解
縫合不全は食道再建術で注意すべき合併症だが、アルブミン3.8g/dL・BMI 19・HbA1c 4.8%と、著しい低栄養や糖尿病といったリスク因子は認めない。
- 4
深部静脈血栓症〈DVT〉不正解
長時間手術と術後臥床でDVTのリスクはあるが、肥満・DVT既往・凝固異常などの上乗せ因子がなく、Aさんで「最も」起こりやすいとはいえない。
📚 混同しやすいので注意
%VC(肺活量が予測値の何%か)は肺が「ふくらむか」、FEV1%は空気が「吐き出せるか」をみる。2つの組合せで換気障害を分類する。 <喫煙のリスクの見方>
- Brinkman指数=1日の喫煙本数 × 喫煙年数。400以上で肺癌のリスクが上がり、600以上は高危険群。
- 禁煙は術前4週間以上あけるのが望ましい。禁煙直後は一時的に気道分泌物が増えるため、術前呼吸訓練を併せて行う。
- 食道癌の危険因子は喫煙と飲酒。飲酒歴が少なくても、喫煙だけでリスクは上がる。
| 分類 | %VC | FEV1%(1秒率) | 代表的疾患 |
|---|---|---|---|
| 正常 | 80%以上 | 70%以上 | — |
| 拘束性換気障害 | 80%未満 | 70%以上 | 間質性肺炎、肺線維症、胸郭変形 |
| 閉塞性換気障害 | 80%以上 | 70%未満 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息 |
| 混合性換気障害 | 80%未満 | 70%未満 | 進行したCOPD、肺結核後遺症 |
参考: 食道癌診療ガイドライン(日本食道学会)/周術期の呼吸器合併症予防に関する指針
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について