第115回 看護師国家試験 午前 問93 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。 Aさん(80歳、男性、要介護2)は1人で暮らしている。脳出血を発症し、急性期病院で地域連携クリニカルパスに沿って治療が行われた。軽度の右不全麻痺と失語があるため、回復期リハビリテーション病院に転院した。Aさんは自宅退院を希望している。退院後はかかりつけの診療所へ通院し、訪問看護と訪問介護を利用する予定である。 退院2か月後、訪問看護師が訪問するとAさんの長男から「最近、父がよく話してくれるようになったが、言いたいことが伝わらずイライラしていることがある。どう対応していいかわからない」と相談があった。 Aさんとのコミュニケーションについて、家族への助言で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 失語のある人には、短くわかりやすい言葉で話しかける。
失語症は「ことばを操る機能」の障害であり、知能や人格が低下したわけではない。
Aさんは脳出血後の失語で、話す意欲は戻ってきたものの、言いたい語が出てこない喚語困難が残り、伝わらないことにいら立っている。
家族への助言の基本は、短く・ゆっくり・一度に1つの内容で話しかけ、Aさんが理解しやすい状況をつくること。 あわせて身振り・表情・絵・書字・実物を指さすなど、ことば以外の手がかりも積極的に使う。 伝わらなかったときに責めず、伝わったことを一緒に喜ぶ関わりが、発話意欲を保つうえで大切になる。
- 1
「Aさんに何度も聞き返しましょう」不正解
何度も聞き返されると「また伝わらなかった」という失敗体験が重なり、焦りと自尊心の低下を招く。分かった部分を「○○ということですね」と確認し、はい・いいえで答えられる質問に変えるほうがよい。
- 2
「Aさんが言い間違えたときは訂正しましょう」不正解
言い間違い(錯語)をその都度訂正すると、話すこと自体が苦痛になり発話意欲が失われる。誤りを指摘せず、意図を汲み取って会話を続ける。
- 3
「Aさんに短くわかりやすい言葉で話しかけましょう」正解
正しい。短く分かりやすい言葉でゆっくり話しかけることは、理解の負担を減らす最も基本的な工夫で、家族がすぐ実行できる。
- 4
「Aさんの表情よりも言葉での表現を大事にしましょう」不正解
失語ではことばでの表現が最も障害される。表情・身振り・視線などの非言語的な手がかりを大事にするのが基本で、この助言は逆である。
📚 一緒に確認しよう
失語のある人との会話は、家族ができる工夫がそのまま助言として問われる。
- テレビを消すなど静かな環境をつくり、正面から視線を合わせて話す。
- 「はい/いいえ」で答えられる閉じた質問から始める。
- 絵カード・写真・五十音表・コミュニケーションノートを併用する。
- 答えを待つ時間を十分にとり、先回りして代弁しすぎない。
| タイプ | 主な損傷部位 | 発話 | 聴覚的理解 | 復唱 |
|---|---|---|---|---|
| Broca〈ブローカ〉失語(運動性) | 前頭葉下部(Broca野) | 非流暢・努力性 | 比較的良好 | 不良 |
| Wernicke〈ウェルニッケ〉失語(感覚性) | 側頭葉上部(Wernicke野) | 流暢だが錯語が多い | 不良 | 不良 |
| 全失語 | 広範な左半球病変 | 非流暢 | 不良 | 不良 |
| 健忘失語 | 側頭頭頂葉など | 流暢だが喚語困難 | 良好 | 良好 |
構音障害は発音そのものの障害で、言語機能は保たれる点が失語と異なる。
参考: 脳卒中治療ガイドライン/日本高次脳機能障害学会 失語症の評価と訓練
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について