第114回 看護師国家試験 午後 問84 解説
📝 問題
後天性の大動脈弁狭窄症〈aortic stenosis〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
2・4
💡 解説
✅ 後天性の大動脈弁狭窄症は弁尖の石灰化で起こり、収縮期に心雑音を聴取する。
大動脈弁狭窄症は、大動脈弁が硬くなって開きにくくなり、左室から大動脈への出口が狭くなる病気である。後天性で最も多い原因は加齢による動脈硬化性の変性と弁尖の石灰化である。二尖弁は生まれつきの形の異常なので、後天性の原因には当たらない。
左室は狭い弁に打ち勝つために高い圧を出さねばならず、壁を厚くする求心性肥大を起こす。厚くなった心筋は酸素を多く使うのに冠血流は不足しがちで、冠動脈に狭窄がなくても胸痛が出ることがある。狭心痛・失神・心不全の三徴が現れると予後は悪く、手術が検討される。
- 1
二尖弁が多い。不正解
二尖弁は、生まれつき弁尖が3枚ではなく2枚しかない先天性の異常である。血流のずれによる刺激で早くから石灰化・狭窄をきたす重要な原因だが、後天性を問う本問には当てはまらない。
- 2
弁尖の石灰化による。正解
後天性で最も多い原因が、加齢に伴う動脈硬化性の変性と弁尖の石灰化である。高血圧・脂質異常症・糖尿病などが進行に関わり、高齢化とともに患者が増えている。
- 3
左室壁は徐々に薄くなる。不正解
左室は圧の負担に対して壁が厚くなる(求心性肥大)ので、薄くはならない。壁が薄くなるのは、大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症のように血液量の負担がかかる場合である。
- 4
収縮期に心雑音を聴取する。正解
狭くなった弁を血液が通り抜けるときに、収縮期の駆出性雑音を聴取する。最強点は第2肋間胸骨右縁で、頸部へ放散するのが特徴である。
- 5
心筋の酸素消費量は減少する。不正解
酸素消費量は増加する。左室が出す圧が高くなり壁も厚くなるぶん、心筋の仕事量が増えるためである。一方で厚くなった心筋の内側は血流が届きにくく、需要と供給の両面から虚血が起こりやすい。
📚 混同しやすいので注意
弁膜症は「いつ聴こえる雑音か」で整理すると見分けやすい。収縮期の雑音なら、狭窄は大動脈弁・肺動脈弁、逆流は僧帽弁・三尖弁である。
- 大動脈弁狭窄症の三徴=狭心痛・失神・心不全。症状が出ると予後が悪く、手術適応の判断が重要になる
- 治療=胸を開いて弁を取り替える大動脈弁置換術と、カテーテルで弁を留置する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)。高齢で手術の負担が大きい人にはTAVIが選ばれる
| 疾患 | 雑音の時相と性質 | 最強点 |
|---|---|---|
| 大動脈弁狭窄症 | 収縮期駆出性雑音(頸部へ放散) | 第2肋間胸骨右縁 |
| 大動脈弁閉鎖不全症 | 拡張期灌水様雑音 | 第3肋間胸骨左縁(Erb領域) |
| 僧帽弁狭窄症 | 拡張期ランブル+僧帽弁開放音 | 心尖部 |
| 僧帽弁閉鎖不全症 | 全収縮期逆流性雑音(左腋窩へ放散) | 心尖部 |
参考: 日本循環器学会「弁膜症治療のガイドライン(2020年改訂版)」
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について