第114回 看護師国家試験 午後 問83 解説
📝 問題
Aさん(35歳、女性)は1年前に子宮体癌〈uterine corpus cancer〉のために単純子宮全摘出術と両側卵巣摘出術を受け、その後、ホルモン補充療法は受けずに健康に過ごしている。 Aさんの血液中で術前よりも濃度が上昇しているホルモンはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
4・5
💡 解説
✅ 両側の卵巣を摘出するとエストロゲンが失われ、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンが上昇する。
卵巣から出るエストロゲンとプロゲステロンは、視床下部と下垂体に「もう出さなくてよい」と伝え、下垂体から出る黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの分泌を抑えている。これをネガティブフィードバックという。
Aさんは両側の卵巣を摘出し、ホルモン補充療法も受けていない。抑える側のホルモンが無くなるので、下垂体は歯止めを失って黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンを増やす。閉経後の女性と同じ状態で、これを外科的閉経という。
- 1
テストステロン不正解
女性のテストステロンは副腎と卵巣の両方から出ている。卵巣を摘出すると卵巣由来の分がなくなるため、上昇するどころかむしろ低下する。
- 2
プロゲステロン不正解
プロゲステロンは排卵後の黄体から分泌される。卵巣がなければ黄体もできないので、血中濃度は低下する。
- 3
エストラジオール不正解
エストラジオールは卵胞から分泌される最も作用の強いエストロゲンで、両側の卵巣を摘出すると大きく低下する。
- 4
黄体形成ホルモン〈LH〉正解
エストロゲンとプロゲステロンによる抑制が外れるため、下垂体前葉からの黄体形成ホルモンの分泌が増える。
- 5
卵胞刺激ホルモン〈FSH〉正解
卵胞刺激ホルモンも同じ理由で増える。さらに、卵胞から出てこれを抑えていたインヒビンも失われるため、黄体形成ホルモン以上に大きく上昇し、閉経の指標にも使われる。
📚 ここも一緒におさえておこう
外科的閉経は自然閉経と違ってホルモンが一気に失われるため、症状が強く出やすい。若いうちに起こるほど長期的な健康リスクも大きくなる。
- 外科的閉経の症状=ほてり・発汗・動悸・不眠・いらだち・抑うつが急に強く出る
- 長期のリスク=エストロゲン不足による骨粗鬆症、脂質異常症、心血管疾患、腟の萎縮と性交痛
- 血中濃度の変化=エストラジオール・プロゲステロン・インヒビンは低下、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンは上昇
- ホルモン補充療法は症状と骨量減少に有効だが、もとの病気(本例は子宮体癌)を踏まえて適応を慎重に判断する
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について