第113回 看護師国家試験 午後 問96 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。 Aさん(43歳、男性、会社員)は、1か月前に右頸部の腫瘤を自覚した。大学病院で非Hodgkin〈ホジキン〉リンパ腫と診断され化学療法導入目的で入院した。 バイタルサイン:体温37.1℃、呼吸数16/分、脈拍84/分、整。 身体所見:顔面に浮腫を認める。 検査所見:Hb12.8g/dL、白血球6,400/μL、総蛋白7.6g/dL、アルブミン4.1g/dL。 胸部造影CT:縦隔リンパ節腫大による上大静脈の圧迫を認める。 AさんはR-CHOP療法終了後も嘔気・嘔吐が続き、制吐薬の追加投与を受けた。治療後3日、「やっと楽になって食事が摂れるようになったけど、やっぱりつらかった。思い出すだけでも気持ち悪くなります」と話している。 Aさんの次回のR-CHOP療法において、嘔気・嘔吐への対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 次回の治療前に制吐薬を投与し、悪心・嘔吐を予防するのが適切である。
「思い出すだけでも気持ち悪くなる」という訴えは、前回のつらさが条件づけになって起こる予期性悪心・嘔吐である。次回は治療前に制吐薬を予防的に投与し、そもそも悪心・嘔吐を起こさせないようにする。
残る3つはいずれも適切でない。水分量を1日1,000mLに固定しても、前日の夕食を抜いても悪心は防げない。抗癌薬の減量は治療効果そのものを落とす。症状は薬で予防し、治療は弱めない、という一点で判断できる。
条件づけとは
ある経験と結びついて、体が自動的に反応するようになること。治療を思い出すだけで気持ち悪くなるのはこのためである。
- 1
1日1,000mLの水分摂取不正解
水分摂取量を1日1,000mLに固定しても予防にはならず、嘔吐量や全身状態に応じた補水が必要である。
- 2
治療前日の夕食の中止不正解
治療前日の夕食中止に悪心・嘔吐の予防効果はない。
- 3
治療前の制吐薬の投与正解
治療前に制吐薬を予防投与し初回から悪心を抑えることが、予期性嘔吐の予防にもつながる。
- 4
抗癌薬の減量不正解
悪心を理由に抗癌薬を減量すると治療効果が損なわれるため、第一選択にはならない。
📚 混同しやすいので注意
悪心・嘔吐は「いつ起こるか」で3つに分けて問われる。名前と時期、それぞれの対策を対にして覚えよう。
- 悪心・嘔吐は急性(24時間以内)・遅発性(24時間以降〜数日)・予期性(治療前から)に分けられる
- 予期性は条件づけによるため、初回から確実に制吐することが最大の予防になる
- においの強い食事を避ける、冷たいものを少量ずつ、口腔ケア、換気などの環境調整も有効
- 予期性が強いときは、抗不安薬や行動療法を併用することもある
| 催吐性リスク | 代表的な薬剤 | 予防的制吐療法 |
|---|---|---|
| 高度(90%超) | シスプラチン、AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド) | 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン+NK1受容体拮抗薬+オランザピン |
| 中等度(30〜90%) | カルボプラチン、イリノテカン、ドキソルビシン単剤 | 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン |
| 軽度(10〜30%) | パクリタキセル、フルオロウラシル | デキサメタゾンなど単剤 |
| 最小度(10%未満) | ビンクリスチン、ブレオマイシン、リツキシマブ | 原則として予防投与は不要 |
参考: 制吐薬適正使用ガイドライン(日本癌治療学会)
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について