第113回 看護師国家試験 午後 問95 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。 Aさん(43歳、男性、会社員)は、1か月前に右頸部の腫瘤を自覚した。大学病院で非Hodgkin〈ホジキン〉リンパ腫と診断され化学療法導入目的で入院した。 バイタルサイン:体温37.1℃、呼吸数16/分、脈拍84/分、整。 身体所見:顔面に浮腫を認める。 検査所見:Hb12.8g/dL、白血球6,400/μL、総蛋白7.6g/dL、アルブミン4.1g/dL。 胸部造影CT:縦隔リンパ節腫大による上大静脈の圧迫を認める。 AさんはR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)を受けた。 AさんのR-CHOP療法の初日に生じる可能性がある合併症はどれか。
✅ 正解
5
💡 解説
✅ 化学療法初日に生じる可能性がある合併症は、腫瘍崩壊症候群である。
腫瘍崩壊症候群(TLS〈ティーエルエス〉)は、化学療法で大量の腫瘍細胞が一気に壊れ、細胞の中身が血液へ流れ出す病態である。高カリウム血症・高リン血症・高尿酸血症・低カルシウム血症をきたし、急性腎障害や致死性不整脈を招く。腫瘍量が多い非Hodgkinリンパ腫では治療開始後12〜72時間以内、つまり初日から起こりうる。
化学療法の有害事象は「いつ出るか」で見分ける。脱毛は2〜3週、口内炎は1〜2週、好中球減少症は7〜14日と、どれも現れるのはもっとあとである。低血糖だけは時期の問題ではなく、血糖を上げるプレドニゾロンの作用とは逆向きなので起こらない。
プレドニゾロンとは
副腎皮質ステロイド薬の一つ。炎症や免疫の働きを抑えるが、血糖を上げる、感染しやすくなるといった副作用がある。
- 1
脱毛不正解
脱毛は投与後2〜3週で現れ、初日には生じない。
- 2
口内炎不正解
口内炎(粘膜炎)は治療後1〜2週頃に生じ、初日の合併症ではない。
- 3
低血糖不正解
プレドニゾロンは高血糖を招くため、低血糖はむしろ生じにくい。
- 4
好中球減少症不正解
好中球減少症は骨髄抑制期の7〜14日頃が最低値で、初日には起こらない。
- 5
腫瘍崩壊症候群正解
腫瘍量の多いリンパ腫では初日から腫瘍崩壊症候群を生じ、電解質異常・急性腎障害を招く。
📚 国試でよく狙われるところ
腫瘍崩壊症候群は「誰に起こりやすいか・どう防ぐか・何が危険か」がまとめて問われる。3つを1組で覚えよう。
- TLSのリスクが高いのは腫瘍量が多い・増殖が速い腫瘍(バーキットリンパ腫、急性白血病、巨大な縦隔病変)
- 予防=十分な輸液と尿量確保、尿酸を下げる薬(アロプリノールなど)
- 高カリウム血症は致死性不整脈を招く。心電図(テント状T波)と血清電解質を頻回に確認する
- 低カルシウム血症ではしびれ・テタニー・けいれんが出現する
| 時期 | 主な有害事象 |
|---|---|
| 投与中〜24時間 | インフュージョンリアクション(リツキシマブ)、血管外漏出、急性の悪心・嘔吐 |
| 12時間〜7日 | 腫瘍崩壊症候群(とくに12〜72時間)、遅発性の悪心・嘔吐、倦怠感、便秘(ビンクリスチン) |
| 7〜14日 | 骨髄抑制(好中球数の最低値)、口内炎、下痢 |
| 2〜3週 | 脱毛 |
| 投与中〜晩期 | 心毒性(ドキソルビシン)、末梢神経障害(ビンクリスチン)、出血性膀胱炎(シクロホスファミド)、二次発がん(晩期) |
参考: 腫瘍崩壊症候群〈TLS〉診療ガイダンス
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について