第111回 看護師国家試験 午後 問29 解説
📝 問題
上位運動ニューロン徴候および下位運動ニューロン徴候の有無について表に示す。 上位運動ニューロン徴候あり・下位運動ニューロン徴候あり: a 上位運動ニューロン徴候あり・下位運動ニューロン徴候なし: b 上位運動ニューロン徴候なし・下位運動ニューロン徴候あり: c 上位運動ニューロン徴候なし・下位運動ニューロン徴候なし: d 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉において正しいのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ ALSは上位・下位運動ニューロン徴候の両方がみられる(a)。
筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉は、脳から脊髄へ指令を伝える上位運動ニューロンと、脊髄から筋へ指令を伝える下位運動ニューロンが、どちらも変性していく進行性の病気である。
片方だけが障害される病気(上位だけなら原発性側索硬化症、下位だけなら脊髄性筋萎縮症)と違い、上位と下位の徴候が両方そろって出るのがALSの特徴で、これが診断の手がかりになる。 両方「あり」のaが当てはまる。
ALSでは、眼球運動障害・感覚障害・膀胱直腸障害・褥瘡といった最後まで起こりにくい症状を四大陰性徴候という。一方で進行すると、球麻痺(構音障害・嚥下障害)や呼吸筋麻痺を来す。
球麻痺とは
脳幹(延髄)から出る運動神経が障害され、話す・飲み込むといった口やのどの動きがうまくできなくなる状態。
- 1
a正解
ALSは上位・下位運動ニューロン徴候がともにみられ正しい。
- 2
b不正解
上位のみ(下位なし)は原発性側索硬化症などのパターンでALSと異なる。
- 3
c不正解
下位のみ(上位なし)は脊髄性筋萎縮症などのパターン。
- 4
d不正解
両方なしは運動ニューロン障害がない状態でALSに該当しない。
📚 ここも一緒におさえておこう
ALSは進行性で根治療法がなく、呼吸筋麻痺に対する人工呼吸器装着の意思決定支援が看護の大きな課題となる。指定難病として医療費助成の対象。
- 進行すると球麻痺(構音障害・嚥下障害)と呼吸筋麻痺を来す。
- 嚥下障害には食形態の工夫・胃瘻造設、構音障害には文字盤・意思伝達装置を用いる。
- 感覚・知能・眼球運動・膀胱直腸機能が保たれるため、意思疎通の手段を最後まで確保することが尊厳の維持につながる。
| 上位運動ニューロン障害 | 下位運動ニューロン障害 | |
|---|---|---|
| 障害部位 | 大脳皮質運動野〜錐体路 | 脊髄前角細胞〜末梢神経 |
| 筋緊張 | 亢進(痙性) | 低下(弛緩性) |
| 腱反射 | 亢進 | 低下・消失 |
| 病的反射(バビンスキー) | 陽性 | 陰性 |
| 筋萎縮 | 軽度(廃用性) | 著明 |
| 線維束性収縮 | なし | あり |
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について