第110回 看護師国家試験 午後 問119 解説
📝 問題
Aさん(88歳、男性)は脱水を疑われ入院となり、点滴静脈内注射が開始された。入院当日の夜間、Aさんは「ここはどこか、家に帰る」などと言い、点滴ラインを触ったり杖を使わずにトイレに1人で行こうとしたりして落ち着かず、ほとんど眠っていなかったと夜勤の看護師から日勤の看護師に申し送りがあった。 日勤でAさんを受け持つ看護師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
1・4
💡 解説
✅ せん妄の高齢者には、時計を見える場所に置く(見当識支援)とラインを視界に入れない対応が適切。
Aさんは入院した当日の夜に、場所がわからず「家に帰る」と訴え、点滴ラインを触り、眠れずに落ち着かない。入院という環境の変化をきっかけに起きた夜間のせん妄が疑われる。 時計を見える場所に置いて日時と場所の見当識を補うこと、点滴ラインを視界から外して自己抜去を防ぐこと、この2つが適切である。
主治医への退院相談は、治療が始まったばかりのこの時点では選べない。 日中をスタッフステーションで過ごしてもらうのは見張るための移動になり、拘束に近い対応になる。 日中にカーテンを閉めると昼夜のリズムが崩れ、せん妄はかえって悪化する。日中は逆に光を入れる。
せん妄は原因が取り除ければ戻る状態である。 環境を整えると同時に、脱水や薬など引き金になっているものを探す。
見当識とは
今がいつで、ここがどこで、目の前の人が誰かを正しくつかむ力。せん妄や認知症ではここが早くから崩れる。
自己抜去とは
患者が自分で点滴やチューブを抜いてしまうこと。出血や治療の中断につながるため、目に触れさせない工夫で防ぐ。
- 1
時計をAさんから見える場所に置く。正解
時計を見える場所に置くことで日時・場所の見当識を補い、せん妄による混乱を和らげる。
- 2
主治医にAさんの退院について相談する。不正解
治療途中であり、せん妄を理由に退院を相談するのは不適切。
- 3
日中はAさんにスタッフステーションで過ごしてもらう。不正解
日中スタッフステーションで過ごさせるのは監視目的の拘束的対応となり適切でない。
- 4
点滴ラインがAさんの視界に入らないようにする。正解
点滴ラインを視界に入れないことで、触る・自己抜去する刺激を減らし事故を防ぐ。
- 5
日中はAさんの病室の窓のカーテンを閉めておく。不正解
日中にカーテンを閉めると昼夜リズムが乱れせん妄を悪化させる。日中は光を取り入れる。
📚 国試でよく狙われるところ
せん妄は、認知症との見分けと、看護でできる予防・ケアの2つで問われる。急に始まって日内で変動するのがせん妄、ゆっくり進んで変動が小さいのが認知症と対で覚えよう。
- 3因子=準備因子(高齢・認知症・脳血管障害)、直接因子(脱水・感染・低酸素・薬剤・電解質異常)、誘発因子(入院による環境変化・不眠・疼痛・身体拘束)
- ケア=時計やカレンダーで見当識を支え、日中は光と活動、夜は静かな環境をつくる。ライン類は視界に入れない
- 動きが減って静かになる低活動型のせん妄は見逃されやすく、うつと間違えられる
| 項目 | せん妄 | 認知症 |
|---|---|---|
| 発症 | 急激(数時間〜数日) | 緩徐 |
| 経過 | 日内変動が大きく夜間に悪化しやすい | 進行性で変動は小さい |
| 意識 | 混濁(注意の集中・維持が困難) | 清明なことが多い |
| 可逆性 | 原因の除去で改善しうる | 多くは不可逆 |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について