第110回 看護師国家試験 午後 問118 解説
📝 問題
Aさん(88歳、男性)は、10年前に脳梗塞を発症し左半身麻痺の後遺症がある。杖歩行はでき、要介護2で介護保険サービスを利用中である。Aさんが最近食欲がなく、水分もあまり摂らず、いつもと様子が違うことを心配した妻がAさんに付き添って受診した。身体所見:呼びかけに対して返答はあるが反応はやや遅い。麻痺の症状に変化はない。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数20/分、脈拍100/分、血圧140/60mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)。検査所見:赤血球410万/μL、白血球6,800/μL、Ht50%、総蛋白6.5g/dL、尿素窒素25mg/dL、Na150mEq/L、K3.8mEq/L、血糖値110mg/dL、CRP0.01mg/dL。胸部エックス線写真に異常なし。 Aさんの状態をアセスメントするために、外来看護師が収集すべき情報で優先度が高いのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 高Na血症から脱水が疑われ、尿濃縮の指標となる尿比重の情報を優先して集める。
Aさんは食欲と水分摂取が落ち、Na150mEq/L(高値)、尿素窒素25mg/dL(高値)、Ht50%(高値)と、体液量が減っている(高張性脱水)ことを示す所見がそろっている。 脱水の程度を確かめるには、腎臓がどれだけ尿を濃くしているかを映す尿比重が有用で、優先度が最も高い。 脱水では尿が濃縮され、尿比重は上昇する。
高齢者は口渇中枢の感受性が下がっており、訴えが乏しくても脱水は進む。口渇感は指標として当てにならない。 呼吸器に異常を疑う所見はなく、呼吸音を先に聴く状況ではない。 腹部膨満感も、いま急いで確かめるべき問題ではない。
高Na・高尿素窒素・高Htという脱水のパターンを読み取り、それを裏づける尿の濃さを確かめる、という順で考える。
尿比重とは
尿がどれだけ濃いかを示す値。基準はおよそ1.005〜1.030で、脱水で体が水をとどめようとすると高くなる。
Ht〈ヘマトクリット〉とは
血液全体に占める赤血球の割合。脱水で血液の水分が減ると、赤血球の数は変わらなくても値が高くなる。
- 1
口渇感不正解
高齢者は口渇中枢の感受性が低下し訴えが乏しくなるため、脱水評価の指標として信頼性が低い。
- 2
呼吸音不正解
CRP正常・胸部X線異常なし・SpO2良好で呼吸器の問題は考えにくく、呼吸音の優先度は低い。
- 3
尿比重正解
高Na・高BUN・高Htで脱水が疑われ、尿濃縮を反映する尿比重が脱水評価に有用で優先度が高い。
- 4
腹部膨満感不正解
腹部膨満感は現時点で緊急に評価すべき主要問題ではない。
📚 3つの型で整理する
脱水は、検査値の読み方と高齢者での気づきにくさが問われる。失われる水とナトリウムの比率によって高張性・等張性・低張性の3型に分かれるので、まず型を決めてから所見を読み合わせたい。
- 脱水を示す検査所見=Na・BUN・Ht・尿比重の上昇と尿量の減少
- 高齢者は口渇の訴えが乏しいため、訴えがないことを脱水の否定材料にせず、口の中の乾きや尿量で判断する
| 型 | 主に失われるもの | 特徴 |
|---|---|---|
| 高張性(水欠乏性) | 水 | 血清Na高値、強い口渇、尿の濃縮。高齢者・発熱・水分摂取不足で起こりやすい |
| 等張性(混合性) | 水とNaが同程度 | 下痢・嘔吐・出血など。循環血液量の減少が前面に出る |
| 低張性(Na欠乏性) | ナトリウム | 血清Na低値。大量発汗に水だけを補給した場合など。倦怠感・けいれん |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について