第110回 看護師国家試験 午後 問116 解説
📝 問題
Aさん(37歳、男性)は筋強直性ジストロフィーで、睡眠時無呼吸に対して夜間のみフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気療法が導入された。退院前カンファレンスで、訪問介護の担当者から、これまでと同様に退院後も昼食の準備と後始末、口腔ケア、入浴介助を行う予定と発言があった。訪問看護師は訪問介護の担当者に、Aさんの状態の変化に気付いたら連絡がほしいと協力を求めた。 訪問介護の担当者に説明するAさんの状態の変化で、特に注意が必要なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 換気不全による二酸化炭素の貯留を示す傾眠傾向の出現に特に注意する。
Aさんは睡眠時無呼吸に対して夜間だけ非侵襲的陽圧換気(NPPV〈エヌピーピーブイ〉)を行っており、入院前も傾眠傾向が強くなって受診した経緯がある。 傾眠傾向は換気が足りずに二酸化炭素がたまっていることを示すサインで、訪問介護の担当者が気づいたら速やかに連絡してもらう。
筋強直性ジストロフィーは呼吸筋が弱くなって低換気になりやすく、二酸化炭素がたまると頭痛・傾眠・意識障害へと進む。 傾眠傾向はこの経過の入口にあたり、生命に直結するサインとして最優先で観察する。
眼の充血・口腔内の乾燥・食事摂取量の低下も気づきたい変化だが、換気の状態を直接映すものではない。 日々ケアに入る訪問介護と、何を見て連絡してほしいかを具体的に決めておくと、悪化を早く拾える。
傾眠傾向とは
声をかければ目を覚ますが、放っておくとすぐ眠ってしまう状態。意識レベルが下がり始めたときの、いちばん早い変化にあたる。
筋強直性ジストロフィーとは
力を入れた筋肉がすぐにゆるまないのが特徴の、進行性の筋疾患。呼吸筋や心臓、白内障など全身に症状が出る。
- 1
傾眠傾向正解
傾眠傾向は換気が足りずに起こる二酸化炭素の貯留を示すサインで、進むと意識障害に至る。
- 2
眼の充血不正解
眼の充血は換気状態を直接反映せず、本疾患で最も注意すべき変化ではない。
- 3
口腔内の乾燥不正解
口腔内の乾燥は観察項目ではあるが、換気不全のサインである傾眠傾向より優先度は低い。
- 4
食事摂取量の低下不正解
食事摂取量の低下も重要だが、二酸化炭素の貯留を示す傾眠傾向ほど生命に直結しない。
📚 国試でよく狙われるところ
筋強直性ジストロフィーは、呼吸障害の気づき方と全身の合併症の2つで問われる。酸素飽和度が保たれていても換気は足りていないことがある、と覚えよう。
- 二酸化炭素がたまり始めたサイン=起床時の頭痛・日中の眠気・集中力低下・悪夢
- 進行すると二酸化炭素ナルコーシス(意識障害・自発呼吸の抑制)に至る
- 筋強直性ジストロフィーは把握ミオトニア(握った手をすぐ開けない)が特徴で、白内障・耐糖能異常・嚥下障害・前頭部脱毛を合併する
- 心伝導障害による突然死のリスクがあり、定期的な心電図評価が欠かせない
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について