第110回 看護師国家試験 午前 問98 解説
📝 問題
A さん(92歳、女性)は、脳梗塞の後遺症のため要介護4で特別養護老人ホームに入所している。看取りの準備が必要と判断された。A さんは、食事を全く食べず、水分も取らなくなり、皮膚も乾燥してきた。家族は毎日面会にきて声をかけているが、反応がなくなってきた。 A さんが死に向かう中で、穏やかに過ごすための援助で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 終末期に穏やかに過ごすため、好きな音楽をかけるなど安楽を重視した援助を行う。
食事・水分摂取がなくなり皮膚も乾燥してきたAさんは、自然な死に向かう終末期の経過にある。この段階のケアの目標は延命ではなく安楽・尊厳の保持であり、聴覚は最期まで保たれやすいとされることからも、歌が好きなAさんに好きな音楽をかけることは、穏やかに過ごすための適切な援助である。
他の選択肢は、この時期の安楽をかえって損なう。自然に飲食が減った時期の輸液は浮腫や分泌を増やし、苦痛を強めうる。 家族の面会は本人の安心にも看取りの過程にも欠かせない。 清潔ケアも「頻回」では体力を消耗するため、負担の少ない範囲で行う。
安楽とは
痛みや息苦しさが取り除かれ、体も心も落ち着いていられる状態のこと。何もしないことではなく、苦痛のもとを1つずつ減らしていく働きかけを指す。
- 1
好きな音楽をかける。正解
聴覚は保たれやすく、好きな音楽は安楽と尊厳を支える適切な援助。
- 2
輸液療法を検討する。不正解
自然な看取り期の輸液は浮腫・分泌増加で苦痛を強めうる。
- 3
家族の面会を制限する。不正解
家族の面会はAさんの安心と看取りの過程に重要で、制限は不適切。
- 4
皮膚の清潔ケアを頻回に行う。不正解
頻回の清潔ケアはかえって負担となる。乾燥への保湿は要すが「頻回」は不適切。
📚 ここも一緒におさえておこう
看取りの時期のケアは、何を足すかではなく何をしないかで問われる。延命ではなく安楽と尊厳の保持が目標、と覚えよう。 聴覚は最期まで残るとされるため、家族には声をかけ続けてよいことを伝える。
- 終末期の輸液は、浮腫・胸腹水・気道分泌の増加を招いて苦痛を強めることがあり、一律には行わない
- 口腔・口唇の乾燥には、氷片や湿らせたスポンジブラシ、保湿剤で対応する
- 死前喘鳴には体位の工夫(側臥位)と吸引の最小化、必要に応じて抗コリン薬を用いる
- ケアは本人の負担にならない範囲で行い、好きな音楽・香り・光など心地よい刺激を整える
- グリーフケア=死別後の家族への支援。看取りの過程で家族ができるケアに参加できるよう促すことも重要
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について