第109回 看護師国家試験 午前 問117 解説
📝 問題
直腸癌再発で終末期にある A さん(57歳、男性)は在宅療養中。退院後3か月。A さんの食事や水分の摂取量は減り、徐々に傾眠傾向になってきた。A さんの妻は訪問看護師に「少し怖いが、できればこのまま自宅で看ていきたい」と話した。 A さんを自宅で看取るための訪問看護師の対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 看取りに向け、今後起こりうる状態の変化を妻に説明する。
終末期で食事・水分の摂取が減り、傾眠が進んでいるAさんを自宅で看取るには、家族がこれから何が起こるかを知っていることが支えになる。 今後起こりうる状態の変化を妻に説明しておけば、妻は見通しをもって最期の時間を過ごせる。 「少し怖いが、できればこのまま自宅で看ていきたい」という妻の思いを支える対応である。
他の3つは、妻の負担を増やすか、家族が関わる機会を減らす。終末期に摂取量が減るのは自然な経過で、輸液を増やすとかえって浮腫や気道分泌による苦痛が強まる。 清潔ケアは、妻が手を添えて一緒に行えるよう声をかけるほうがよい。 最期までそばを離れないよう求めれば、妻は休むことができなくなる。
傾眠とは
うとうとと眠りがちで、声をかけたり体を揺すったりすると目を覚ます状態。終末期には少しずつ深まっていく。
- 1
高カロリー輸液の開始を医師と相談する。不正解
終末期の摂取量低下は自然な経過で、高カロリー輸液は浮腫や苦痛を招くことがあり適切でない。
- 2
A さんの清潔ケアは看護師が行うことを妻に伝える。不正解
清潔ケアを看護師のみが行うと、家族が本人に関わる大切な機会を奪ってしまう。
- 3
今後起こりうる A さんの状態の変化を妻に説明する。正解
今後の変化を説明することで妻が見通しをもち、慌てず看取りに臨めるよう支えられる。
- 4
A さんが亡くなるまで家族がそばを離れないように伝える。不正解
常にそばを離れないよう求めるのは家族に過度な負担を強い、現実的でなく妻を追い詰める。
📚 ここも一緒におさえておこう
在宅看取りは、「家族が見通しをもてること」と「家族がケアに参加できること」の2つで支える。 この2つに沿って、前もって伝えることと、家族に任せられるケアを分けて覚えよう。
- 死が近づくと現れる変化(下顎呼吸・チェーンストークス呼吸・四肢の冷感とチアノーゼ・橈骨動脈が触れにくくなる・死前喘鳴・傾眠の深まり・尿量の減少)を、あらかじめ具体的に説明しておく。
- 終末期の輸液の減量・中止は「見捨てること」ではなく、浮腫・胸腹水・気道分泌による苦痛を減らす選択であることを伝える。
- 口腔ケアや氷片・スポンジによる口渇のケア、手を握る、好きな音楽をかけるなどは、家族が担える大切なケアになる。
- 急変時は、救急車を呼ぶ前にまず訪問看護ステーション・主治医へ連絡することを、連絡先とあわせて共有しておく。
- 医師は、生前に診療していた傷病で死亡したと判断できれば死後の診察によっても死亡診断書を交付できる。
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について