第106回 看護師国家試験 午前 問50 解説
📝 問題
Aさん(60歳、男性)は、慢性心不全の終末期で、積極的な治療を行わないことを希望している。現在、入院中で、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、水分制限がある。時々息切れがみられるが、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみにしている。バイタルサインは呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉88%であった。このときの対応で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 面会は制限せず、長女と過ごす時間を続けられるようにする。
Aさんは積極的な治療を行わないことを希望しており、慢性心不全の終末期にある。 この時期に優先されるのは検査値の改善ではなく、生活の質を保つことである。
長女との会話はAさん自身が楽しみだと語っているもので、面会は制限しない。 体力の消耗が心配なら面会そのものを止めるのではなく、時間や人数、体位を調整して負担を軽くする。
他の3つは、いずれもAさんの苦痛を増やす方向にはたらく。
リザーバーマスクとは
マスクに付いた袋に酸素をためておき、息を吸うときに一気に送り込むことで高い濃度の酸素を投与できる器具。
- 1
面会は制限しない。正解
Aさんが自分から楽しみだと話している時間なので、そのまま続けられるように整える。消耗が気になるときは短時間にする、静かな環境にするなど、過ごし方のほうを調整する。
- 2
水分制限を厳しくする。不正解
水分制限は心臓の負担を減らすために行っているが、これ以上厳しくすると口渇の苦痛が増す。渇きには氷片を含んでもらう、口腔ケアで潤すといった対応をとる。
- 3
Aさんに仰臥位を維持してもらう。不正解
仰臥位では横隔膜が押し上げられて肺が広がりにくく、息切れが強まる。呼吸が楽になるのは上半身を起こしたファウラー位や起座位である。
- 4
面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する。不正解
リザーバーマスクは高い濃度の酸素を送るための器具で、鼻腔カニューラに替えると届く酸素が大きく減る。会話のしやすさと引き換えに低酸素を招けば、かえって苦痛が増す。
📚 ここも一緒におさえておこう
終末期の設問は、「制限を足す」か「苦痛を減らす」かで迷わせる形で出る。本人が望んでいることを守れる選択を探そう。
- 水分制限や安静度は、余命が限られた時期には苦痛の緩和を優先して緩める
- 呼吸困難には体位の工夫、顔への送風、不安への対応を組み合わせる。酸素の量を増やすだけでは楽にならない
- 面会・外出・好きな食べ物といった本人の望みは、できる範囲で叶える方向で調整する
参考: 日本循環器学会・日本心不全学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン」/系統看護学講座 成人看護学 緩和ケア
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について