第115回 看護師国家試験 午後 問87 解説
📝 問題
加齢に伴う高齢者の泌尿器系の変化で正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
3・4
💡 解説
✅ 膀胱の収縮力低下と尿細管基底膜の肥厚が加齢による変化である。
加齢に伴う泌尿器系の変化は、腎臓側と下部尿路側に分けて整理する。腎臓では糸球体の硬化とネフロン数の減少が進み、尿細管の基底膜は肥厚して尿細管は萎縮し、間質には線維化が起こる。その結果、腎血流量と糸球体濾過量〈GFR〉は低下し、尿を濃縮する力も薄める力も落ちる。 高齢者は脱水にも低ナトリウム血症にも傾きやすい。
下部尿路では膀胱の伸展性が低下して容量が減り、排尿筋の収縮力が低下して膀胱を空にしきれず残尿が増える。加えて夜間の尿量が増えるため、排尿回数は減るのではなく増える。男性では前立腺肥大が加わり、女性では骨盤底筋の脆弱化から腹圧性尿失禁が起こりやすくなる。
つまり「腎も膀胱も機能は落ちる」「尿は薄くなり、回数は増える」の2つで押さえておけばよい。
- 1
尿濃縮力の亢進不正解
尿の濃縮力は加齢により亢進ではなく低下する。抗利尿ホルモンに対する集合管の反応性が落ち、髄質の浸透圧勾配も保ちにくくなるため、水分が不足しても尿を十分に濃くできず脱水に陥りやすい。
- 2
排尿回数の減少不正解
排尿回数は減少ではなく増加する。膀胱容量の減少、残尿の増加、そして夜間の尿量が増えること(夜間多尿)が重なり、とくに夜間頻尿が問題になる。
- 3
膀胱収縮力の低下正解
排尿筋(膀胱平滑筋)の収縮力が低下するため、1回の排尿で膀胱を空にしきれず残尿が増える。残尿は尿路感染症や溢流性尿失禁の原因となる。なお、収縮力の低下と同時に不随意な収縮(過活動膀胱)が増えることもあり、両者は併存しうる。
- 4
尿細管の基底膜の肥厚正解
加齢に伴い尿細管の基底膜は肥厚し、尿細管そのものは萎縮して、間質には線維化がみられるようになる。糸球体の硬化とあわせて、これらが腎機能低下の形態的な基盤となる。
- 5
糸球体濾過量〈GFR〉の増加不正解
糸球体濾過量〈GFR〉は増加ではなく低下する。おおむね30歳代以降、10年あたり約8mL/分/1.73m2のペースで低下していくとされる。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
高齢者では筋肉量が減るため血清クレアチニンが見かけ上低く出て、実際よりも腎機能がよく見えることがある。年齢・性別を加味したeGFRやシスタチンCで評価する。
| 項目 | 変化 | 臨床的な意味 |
|---|---|---|
| 腎重量・ネフロン数 | 減少(糸球体硬化) | 腎の予備能の低下 |
| 腎血流量・GFR | 低下 | 薬物の排泄遅延、脱水で容易に腎前性AKIへ |
| 尿細管 | 基底膜の肥厚・萎縮、間質の線維化 | 再吸収・分泌能の低下 |
| 尿の濃縮力・希釈力 | ともに低下 | 脱水にも低ナトリウム血症にも傾きやすい |
| レニン・アルドステロン | 低下 | ナトリウム保持能の低下、高カリウム血症を来しやすい |
| 活性型ビタミンDの産生 | 低下 | 骨代謝への影響 |
| 膀胱容量・排尿筋収縮力 | 低下 | 頻尿、残尿の増加 |
| 前立腺(男性) | 肥大 | 尿勢低下、排尿困難、尿閉 |
| 骨盤底筋(女性) | 脆弱化 | 腹圧性尿失禁 |
参考: 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」(加齢と腎機能)/日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」/系統看護学講座 老年看護学
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について