第115回 看護師国家試験 午後 問76 解説
📝 問題
心臓からの血液の拍出について正しいのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 房室弁は心房拡張期の途中で開き、心室への充満が始まる。
心周期は弁の開閉のタイミングで理解する。 心室が収縮を始めると、まず房室弁が閉じ(このときI音が生じる)、動脈弁もまだ閉じたままで心室内圧だけが上がる等容性収縮期になる。 心室内圧が大動脈圧・肺動脈圧を超えてはじめて動脈弁が開き、駆出期に入る。 つまり心室収縮期は動脈弁が開いて始まるのではない。
心室が弛緩すると動脈弁が閉じ(II音)、等容性弛緩期を経て、心室内圧が心房内圧を下回った時点で房室弁が開く。このとき心房は収縮しておらず拡張したまま血液をためている状態なので、房室弁が開くのは心房拡張期の途中ということになる。 心房収縮が起こるのはさらに後、心室拡張の最終段階である。
なお、定常状態では心拍出量と静脈還流量は等しく、左心室と右心室の拍出量も等しい(体循環と肺循環は直列につながっているため)。左右で違うのは量ではなく圧である。
- 1
静脈還流量より多い。不正解
定常状態では、心臓から拍出される量(心拍出量)と心臓に戻る量(静脈還流量)は等しい。どちらかが多い状態が続けば血液はどこかに溜まり続けることになり成立しない。静脈還流量が増えると心筋が伸展されて1回拍出量が増える(Frank-Starlingの法則)ことで両者は釣り合う。
- 2
左心系の方が右心系より多い。不正解
体循環と肺循環は直列につながっているため、左心室と右心室の1回拍出量は等しい。左右で異なるのは圧で、左心室は約120mmHg、右心室は約25mmHgと大きな差がある。この圧差が左心室壁の厚さの違いに反映される。
- 3
左右の動脈弁は同時に閉まる。不正解
大動脈弁のほうが肺動脈弁より先に閉じる。そのためII音は2成分に分かれ、とくに吸気時には右心系への静脈還流が増えて右室の駆出時間が延び、肺動脈弁の閉鎖がさらに遅れるため分裂が大きくなる(II音の生理的分裂)。
- 4
心房拡張期の途中で房室弁が開く。正解
心室が弛緩して心室内圧が心房内圧を下回った時点で房室弁が開き、心室への充満が始まる。この時点で心房は収縮しておらず拡張期の途中であり、心房収縮(心房収縮期)はさらに後の心室拡張末期に起こる。
- 5
心室収縮期は動脈弁が開いて開始する。不正解
心室収縮期は房室弁の閉鎖から始まる。はじめは房室弁も動脈弁も閉じたまま心室内圧だけが上がる等容性収縮期で、心室内圧が動脈圧を超えたところで動脈弁が開いて駆出期に移る。動脈弁が開くのは心室収縮期の開始ではなく途中である。
📚 ここも一緒におさえておこう
心周期は、弁の開閉・心音・心室容積を組み合わせて問われる。どの弁が閉じたときにどの音が鳴るかで覚えよう。
- I音=房室弁(僧帽弁・三尖弁)の閉鎖音で心尖部で最も強い。II音=動脈弁(大動脈弁・肺動脈弁)の閉鎖音で心基部で最も強い
- 心拍出量=1回拍出量×心拍数。成人の安静時で約5L/分(1回拍出量約60〜80mL×心拍数約70回/分)
- 駆出率〈EF〉=1回拍出量÷拡張終期容積。正常は55〜70%程度で、心不全の分類に用いられる
| 時期 | 房室弁 | 動脈弁 | 心室容積 | 心音 |
|---|---|---|---|---|
| ①等容性収縮期 | 閉 | 閉 | 変わらない(拡張終期容積) | 始まりにI音 |
| ②駆出期 | 閉 | 開 | 減少 | ― |
| ③等容性弛緩期 | 閉 | 閉 | 変わらない(収縮終期容積) | 始まりにII音 |
| ④充満期(急速充満→緩徐充満→心房収縮) | 開 | 閉 | 増加 | III音・IV音(多くは病的) |
参考: 標準生理学(心周期・心音)/系統看護学講座 解剖生理学(循環器系)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について