第115回 看護師国家試験 午後 問120 解説
📝 問題
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。 大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。 土砂災害の発生によって家屋の復旧が遅れており、今後さらに避難生活が必要になることが避難者に説明された。避難所を開設してから5日が経過しており、避難者の間で、家に戻れない不安と慣れない避難生活のストレスから、配食や洗濯場の順番を理由に口論が起こっていた。その日の午後、Dさん(72歳、男性)が「何度言ったらわかるんだ」と大声を出していた。避難所の看護師が近づくと、Dさんの表情がこわばっており苛立っているのが分かった。 このときの看護師のDさんへの対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 苛立っているDさんは、複数人で刺激の少ない静かな場所へ案内するのが適切である。
避難所生活が長引くと、プライバシーのなさ、騒音、睡眠不足、先の見えない不安が重なり、些細なことで対立が起こる。 Dさんの表情のこわばりと苛立ちは、この状況で生じたストレス反応として理解する。 興奮している人への対応の原則は、刺激の少ない静かな場所へ移ることと、複数人で当たることである。 人前でのやりとりは面子を傷つけて興奮を強め、1人での対応は看護師自身の安全を損なう。
場所を移したうえで話をさえぎらずに聴き、何に困っているのかを具体的に確認する。 配食や洗濯場の順番といった運営上の問題であれば、個人の我慢ではなく避難所の仕組み(順番の可視化、時間帯の分散)として解決を図る。
- 1
複数人で静かな環境に案内する。正解
静かな環境へ移すことで刺激が減り、興奮が鎮まりやすくなる。複数人で対応するのは、看護師と本人双方の安全を確保し、後から状況をチームで共有できるようにするためである。
- 2
大きな声で落ち着くように注意する。不正解
大きな声での注意はそれ自体が刺激となり、興奮を増幅させる。落ち着いた低いトーンで、ゆっくり短い言葉で話しかける。
- 3
背後からゆっくりとタッチングを行う。不正解
背後からの接触は不意打ちとなり、驚きや反射的な攻撃を招く。正面のやや斜めから視野に入る位置で近づき、触れる前に声をかけて了解を得る。
- 4
他の人も我慢しているのでDさんも我慢するよう説明する。不正解
「他の人も我慢している」は感情を否定し、Dさんの訴えを封じるだけで、根本にある生活上の困りごとは残ったままになる。我慢の強要は避難所全体の不満を潜在化させる。
📚 ここも一緒におさえておこう
避難所での健康問題は時間の経過とともに種類が変わる。生活環境の改善そのものが看護の対象になる。
- スフィア基準の目安=1人あたり最低3.5m²の居住空間、トイレは20人に1基、トイレの男女比は男性1に対して女性3
- 災害後の心理過程=英雄期→ハネムーン期→幻滅期(不満や対立が表面化する)→再建期。避難生活が長引く時期は幻滅期に入りやすい
- 避難所のストレス要因=プライバシーの欠如、騒音、照明、温度、配食やトイレの列、情報不足、役割の喪失
| 時期 | 主な問題 | 予防・対応 |
|---|---|---|
| 発災直後〜数日 | 外傷、持病の悪化、内服の中断、脱水 | 持病と内服の確認、水分の確保、要配慮者の把握 |
| 数日〜数週 | 感染症(呼吸器・胃腸炎)、深部静脈血栓症、不眠、便秘 | 手洗い・換気・トイレの清潔、下肢の運動と水分摂取、就寝環境の整備 |
| 数週〜 | 生活不活発病、生活習慣病の悪化、心理的問題、対人トラブル | 活動の場づくり、栄養バランス、こころのケア、運営への住民参加 |
参考: 避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(内閣府)/スフィアハンドブック(人道憲章と人道支援における最低基準)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について