第115回 看護師国家試験 午後 問105 解説
📝 問題
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。 Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒による大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。 Aさんは深い昏睡状態となり、四肢の冷感、チアノーゼ、喘鳴および下顎呼吸が出現してきた。医師は家族にAさんの死期が近いことを説明した。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 家族と過ごせるよう居室を整えるのが最も適切である。
四肢の冷感、チアノーゼ、喘鳴、下顎呼吸は、死が数時間以内に迫っていることを示す徴候である。 延命処置を行わない方針が本人・家族の合意で決まっているこの場面で看護師がすべきなのは、Aさんと家族が最期の時間を一緒に過ごせる環境を整えることである。 プライバシーを確保し、椅子や照明を整え、家族が声をかけたり手を握ったりできるようにする。
死前喘鳴は、のどにたまった分泌物が呼吸で鳴る音で、本人が苦しんでいるとは限らない。 家族は音に驚くので、その意味を説明する。
- 1
足浴を行う。不正解
足浴は循環を促し安楽をもたらすケアだが、深い昏睡で全身状態が不安定なこの時期には、体位変換や下肢の移動そのものが負担になりうる。いま最優先されるケアではない。
- 2
口腔内吸引を行う。不正解
死前喘鳴の原因はのどにたまった分泌物で、深部までの吸引は苦痛が大きいわりに効果が乏しい。体位の工夫と口腔内の清拭・保湿を優先する。
- 3
心肺蘇生の準備をする。不正解
延命処置を行わない方針が本人の意思として確認され、家族も同意している。心肺蘇生の準備は本人の意思と合意に反する対応である。
- 4
家族と過ごせるよう居室を整備する。正解
死期が迫った時期の看護の中心は、本人の安楽と、家族が悔いなく看取れる環境の保証である。居室を整え家族が付き添える状況をつくることが最も適切である。
📚 国試でよく狙われるところ
看取りの直前期は、処置を足すことよりも苦痛を増やさない判断が問われる。終末期の呼吸は、名前と特徴を対にして覚えよう。
- 死前喘鳴には体位調整・口腔ケアのほか、ブチルスコポラミンなどの抗コリン薬が用いられることがある
- バイタルサインの頻回測定は本人の安静を妨げるため、この時期は必要最小限にする
- 死亡確認後は家族が別れの時間を持てるよう配慮したうえでエンゼルケアを行い、家族が希望すれば一緒に行う
| 呼吸 | 特徴 |
|---|---|
| Cheyne-Stokes〈チェーンストークス〉呼吸 | 無呼吸と、深さが漸増漸減する呼吸を周期的に繰り返す |
| 下顎呼吸 | 下顎を動かして努力様に吸気する。死亡直前の徴候 |
| 死前喘鳴 | 咽頭に貯留した分泌物によるゴロゴロという音 |
参考: がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン(日本緩和医療学会)/人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について