第113回 看護師国家試験 午後 問86 解説
📝 問題
Aさん(55歳、男性、会社員)は30年の喫煙歴がある。会社の健康診断で高血圧を指摘されて生活習慣の改善を勧められたが「週末にスポーツジムで運動するようになったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と述べた。 Aさんの自己効力感を高める支援はどれか。2つ選べ。
✅ 正解
1・3
💡 解説
✅ 運動への取り組みを評価し、本人が取り組めそうな目標を一緒に設定することが、自己効力感を高める支援として適切である。
自己効力感(セルフエフィカシー)は「自分にもできそうだ」という感覚で、遂行行動の達成(自分で成功する)や言語的説得(人から認められる)によって高まる。 Aさんが自分で始めた運動を認めることは言語的説得、取り組めそうな目標を一緒に決めて成功につなげることは遂行行動の達成にあたる。
配置転換の依頼・気持ちになるまで待つこと・危険性の説明は、いずれも「できそうだ」という感覚を育てる働きかけにならない。
- 1
Aさんの運動への取り組みを評価する。正解
始めた運動を肯定的に評価することは言語的説得として自己効力感を高める。
- 2
Aさんの職場の上司に配置転換を依頼する。不正解
上司への配置転換の依頼は本人の自己効力感とは無関係で、支援として適切でない。
- 3
Aさんが取り組めそうな目標を一緒に設定する。正解
取り組めそうな目標を一緒に設定し成功体験につなげることは自己効力感を高める。
- 4
Aさんが生活習慣を改善する気持ちになるまで待つ。不正解
気持ちになるまで待つだけでは働きかけにならず、支援とはいえない。
- 5
Aさんが脳血管疾患になる危険性が高いことを説明する。不正解
脳血管疾患の危険性を伝えるだけでは、自己効力感を高める支援にならない。
📚 これとセットで理解しよう
行動変容ステージモデルでは無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期と進む。運動を始めたAさんは実行期にあたり、続けられるよう承認と具体的な目標設定で支えることが逆戻りの予防になる。
- 恐怖や不安をあおる説明は行動変容につながりにくく、回避や否認を招くことがある
- 本人の生活や価値観に合い、本人が納得して選べる目標にする
| 情報源 | 内容 | 看護の例 |
|---|---|---|
| 遂行行動の達成 | 自分で成功を体験する(最も強力) | 達成可能な小さな目標を一緒に設定し、できたことを確認する |
| 代理的経験 | 他者の成功を見る(モデリング) | 同じ疾患で工夫している患者の体験を紹介する |
| 言語的説得 | 他者から認められる・励まされる | 取り組みを具体的に承認しフィードバックする |
| 生理的・情動的状態 | 心身が良好であると自覚する | 不安や疲労を軽減し、体調が整った感覚を実感できるようにする |
参考: 自己効力感(Banduraのセルフエフィカシー理論)
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について