第111回 看護師国家試験 午後 問42 解説
📝 問題
Aさん(55歳、男性、会社員)は胃癌の終末期である。 Aさんの訴えのうちスピリチュアルペインの表出はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 「これまでの自分の人生が意味のないものに思える」がスピリチュアルペインの表出である。
全人的苦痛(トータルペイン)は、身体的・精神的・社会的・スピリチュアル(霊的)の4つの側面からなる。 このうちスピリチュアルペインは、生きる意味や価値、存在そのものが揺らぐ苦しみをいう。「これまでの自分の人生が意味のないものに思えます」という訴えは、生きてきた意味を失った言葉そのものである。
他の選択肢は、別の側面の苦痛にあたる。「腹痛がずっと続いています」は身体的苦痛、「吐き気が続くと思うと不安です」は身体症状に伴う精神的苦痛、「今後の生活にかかるお金が心配です」は経済的な問題で社会的苦痛である。 スピリチュアルペインは「なぜ自分が」「生きている意味がない」「役に立たない存在だ」のように、意味・価値・存在・尊厳にかかわる訴えとして表れる。
- 1
「腹痛がずっと続いています」不正解
腹痛は身体的苦痛の表出である。
- 2
「吐き気が続くと思うと不安です」不正解
吐き気への不安は身体症状に伴う精神的苦痛である。
- 3
「今後の生活にかかるお金が心配です」不正解
お金の心配は経済的問題であり社会的苦痛に分類される。
- 4
「これまでの自分の人生が意味のないものに思えます」正解
人生の意味の喪失を示す訴えで、生きる意味・存在に関わるスピリチュアルペインである。
📚 ここも一緒におさえておこう
トータルペインの考え方はシシリー・ソンダース(近代ホスピスの創始者)が提唱した。 世界保健機関(WHO)の緩和ケアの定義では、対象は患者と家族である。 始める時期は死が近づいてからではなく、診断された早期からとされている。
- スピリチュアルペインには、傾聴し、そばにいて、語りを支える関わりが基本。安易な励ましや否定は苦痛を深める。
- 4つの苦痛は互いに影響し合うため、身体的苦痛(痛み)のコントロールが精神的・霊的な安定の前提になる。
- がん疼痛ではWHO方式(経口的に・時刻を決めて・患者ごとに・その上で細かい配慮を)に沿って鎮痛薬を用いる。
- レスパイトケア(介護する家族が休むための一時的な入所や預かり)やグリーフケア(遺族ケア)など、家族への支援も緩和ケアに含まれる。
| 側面 | 内容 | 訴えの例 |
|---|---|---|
| 身体的苦痛 | 痛み、呼吸困難、倦怠感、悪心・嘔吐 | 「お腹が痛い」 |
| 精神的苦痛 | 不安、抑うつ、いらだち、孤独感、恐れ | 「これからどうなるのか怖い」 |
| 社会的苦痛 | 経済的問題、仕事・家庭役割の喪失、人間関係 | 「治療費が払えない」 |
| スピリチュアルな苦痛 | 生きる意味・価値の喪失、罪責感、死への恐れ、尊厳の揺らぎ | 「生きている意味がない」 |
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について