第111回 看護師国家試験 午前 問91 解説
📝 問題
A さん(60 歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。A さんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。 人体の前面と背面を図に示す。 A さんの人工肛門が造設される位置はどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 直腸切断術後のS状結腸ストーマは左下腹部(③)に造設される
腹会陰式直腸切断術(マイルス手術)は、直腸と肛門をまとめて取る手術。便の出口がなくなるので、S状結腸を腹壁に出して永久的な単孔式ストーマ(人工肛門)を造る。S状結腸は左下腹部を通るため、ストーマもその位置、図では③になる。
ほかの位置は合わない。①は臍より頭側の上腹部、②は右下腹部で、どちらもS状結腸の走行から外れる。④は背面の、もとの肛門があった位置で、この手術では肛門は縫い閉じられる。
Aさんのように出口の場所がイメージできないときは、造設予定の位置を体の上で実際に示すと分かりやすい。
単孔式とは
腹壁に出す開口部が1つだけのストーマ。腸を切り離した口側の端を出すので、永久につくるものはこの形になる。
- 1
①不正解
①は臍より頭側の上腹部。ここは横行結腸ストーマの位置で、S状結腸では届かない。
- 2
②不正解
②は右下腹部。ここは回腸ストーマ(イレオストミー)を造る位置で、S状結腸とは反対側にあたる。
- 3
③正解
S状結腸を用いた永久的単孔式ストーマは左下腹部(③)に造設される。
- 4
④不正解
④は背面の殿裂の上端、もとの肛門の位置。この手術では肛門を摘出して縫い閉じるため、ここに便の出口は造らない。
📚 国試でよく狙われるところ
ストーマは、造設部位と便の性状を組み合わせて問われる。大腸を長く通るほど水分が吸われると考えれば、位置から便の硬さを言い当てられる。 水様便になる回腸ストーマでは、脱水と電解質の異常、皮膚障害に注意する。
- 位置決め(ストーマサイトマーキング)は術前に行う。臍より低い位置で腹直筋を貫き、しわ・骨の出っぱり・瘢痕を避け、本人が見えて自分で扱える場所を選ぶ。座位・立位・前屈位のいずれでも確かめる。
- 単孔式(開口部が1つ)と双孔式(ループ式・一時的なことが多い)がある。腹会陰式直腸切断術は永久的な単孔式。
- 永久的ストーマ造設者は身体障害者手帳(膀胱・直腸機能障害)の対象となり、装具の給付(日常生活用具)を受けられる。
- 退院後はストーマ外来や皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)による継続支援につなぐ。
| ストーマ | 造設部位 | 便の性状 |
|---|---|---|
| S状結腸ストーマ | 左下腹部 | 有形〜軟便 |
| 横行結腸ストーマ | 上腹部 | 泥状便 |
| 回腸ストーマ(イレオストミー) | 右下腹部 | 水様便(量が多い) |
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について