第108回 看護師国家試験 午後 問98 解説
📝 問題
Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer(アルツハイマー)型認知症で、認知症対応型共同生活介護〈認知症高齢者グループホーム〉に入所している。発熱や下痢を主訴に外来を受診した。 Aさんは入院し、点滴静脈内注射が開始された。Aさんの顔色は良くなり眠っているため、介護職員は施設に戻った。看護師がAさんの様子を確認するため病室へ行くと、目が覚めたAさんは「誰かいないの」と大声を出し、興奮した様子で点滴静脈内注射のラインを外そうとしていた。 看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
2・5
💡 解説
✅ せん妄状態で興奮する認知症患者には、現状(入院中であること)を穏やかに伝え、ライン抜去を防ぐため点滴を見えないよう工夫する対応が適切である。
見知らぬ環境で目を覚ました認知症の高齢者が「誰かいないの」と興奮し、点滴を外そうとしている。 この場面では、入院と脱水をきっかけに起きたせん妄が疑われる。 まず行うのは、いまどこにいるのかを穏やかに伝える見当識を補う声かけで、不安がやわらげば落ち着きにつながる。 あわせて、点滴静脈内注射のラインを本人の視野に入りにくいようにし、注意が向かない環境を整えて抜去の事故を防ぐ。
認知症やせん妄のケアでは、身体拘束や安易な薬に頼らず、環境と関わり方で混乱をやわらげるのが原則である。 睡眠薬は眠らせても、せん妄をかえって悪化させることがある。 身体拘束は最後の手段で、「興奮が落ち着くまで」という理由で使うものではない。 家族に退院までの付き添いを求めるのは負担が大きすぎる。
まず環境を整え、言葉で関わることから始める姿勢が問われる。
せん妄とは
体の不調や環境の変化をきっかけに、急に起こる意識の混乱。時間や場所が分からなくなり、興奮したり点滴を抜こうとしたりする。
- 1
睡眠薬を与薬する。不正解
睡眠薬の投与はせん妄を悪化させたり転倒リスクを高めたりするおそれがあり、第一選択ではない。
- 2
入院中であることを伝える。正解
今どこにいるのか(入院中であること)を穏やかに伝えて見当識を補い、不安を和らげる対応は適切である。
- 3
興奮が落ち着くまで身体拘束を行う。不正解
身体拘束は切迫性・非代替性・一時性を満たす最終手段で、まず非拘束的対応を試みるべきである。
- 4
息子に退院まで付き添うよう連絡する。不正解
2か月に1回しか面会できない息子に退院までの付き添いを求めるのは非現実的で、家族に過重な負担を課す。
- 5
点滴静脈内注射のラインを見えないようにする。正解
ライン抜去による事故を防ぐため、点滴を視野に入りにくくして注意を引かない工夫は適切である。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
せん妄は3つの因子が重なって起こる。 取り除ける因子を探して介入するのがケアの基本。
- 身体拘束が例外的に許されるのは切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす場合のみ
- ケアの基本は見当識を補う声かけ・照明や時計の調整・昼夜のリズムづくり・慣れた物品の持ち込み
- せん妄は意識障害を伴い、急激に発症し変動する点で認知症と区別する
| 因子 | 例 |
|---|---|
| 準備因子 | 高齢、認知症、脳血管障害の既往 |
| 直接因子 | 脱水、感染、電解質異常、低酸素、薬剤(睡眠薬・抗コリン薬など)、手術 |
| 誘発因子 | 入院による環境変化、身体拘束、疼痛、不眠、感覚遮断 |
参考: 日本老年看護学会「認知症高齢者の看護」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について