第108回 看護師国家試験 午後 問120 解説
📝 問題
Aさん(55歳、男性、自営業)は、父親(78歳)と2人暮らし。吐血で緊急入院となった。 Aさんは、医師から「検査の結果、スキルス胃癌でした。膵臓や広範囲な腹膜への転移があって手術ができない状態でした。おそらく余命半年だと思います」と告知され、1週後に退院となった。退院後3か月、Aさんは外来看護師に「ずいぶん腰痛と腹痛がひどく、腹水が溜まって動くのも大変になってきました。最期は人工呼吸器の装着など延命をしたくないのですが、それを意識がなくなったあとにも医師に伝える方法はありますか」と尋ねた。そこで、看護師はAさんにリビングウィルの説明をすることにした。 Aさんに対して看護師が行うリビングウィルの説明で正しいのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ リビングウィルは本人の自由意思で作成でき、後から変更も可能な事前の意思表示であると説明する。
リビングウィルは、判断能力があるうちに、終末期に自分が望む・望まない医療(延命処置の可否など)を文書で表明しておく事前指示の一つである。 作成はあくまで本人の自由意思に基づき、強制されるものではない。 意識がなくなったあとも延命を望まない意思を残したい、というAさんの希望をかなえる手段になる。
他の3つは誤りである。 リビングウィルを定めた法律は日本にはなく、本人が自発的に書き残すものである。 グリーフケアは遺族に向けたケアで、本人の意思表示とは別のものである。 本人の意思は状況とともに変わるため、いつでも変更・撤回できる。
- 1
「法律で定められた文書です」不正解
リビングウィルは法律で作成が義務づけられた文書ではなく、本人の自発的な意思表示である。
- 2
「父親のグリーフケアに必要な書類です」不正解
グリーフケアは遺族の悲嘆に対するケアであり、本人の終末期医療の意思表示であるリビングウィルとは別概念である。
- 3
「Aさんの自由意思で作成することができます」正解
リビングウィルは判断能力のあるうちに本人の自由意思で作成でき、Aさんの希望をかなえる手段になる。
- 4
「一度作成すると内容を変更することはできません」不正解
本人の意思は状況の変化に応じていつでも変更・撤回でき、一度作成したら変更できないというのは誤りである。
📚 混同しやすいので注意
終末期の意思表示は、似た用語を入れ替えて問われる。 事前指示は「何を望むか」を書き残すものと「誰に判断を託すか」を決めるものの2つに分けられる。 アドバンス・ケア・プランニング〈ACP〉は、それらを含む話し合いのプロセスである。
- リビングウィルに法的な作成義務はないが、書き残しておくと意識を失ったあとも本人の意思が医療者に伝わる
- ACPは繰り返し話し合う点が重要で、一度決めて終わりではない
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| リビングウィル | 終末期に望む・望まない医療を、判断能力があるうちに文書で表明したもの |
| 代理人指示 | 判断できなくなったときに代わりに意思決定する人をあらかじめ指名すること |
| アドバンス・ケア・プランニング〈ACP〉 | 本人・家族・医療者が繰り返し話し合い、意思決定を支えるプロセス |
| グリーフケア | 遺族の悲嘆に寄り添うケア。本人の意思表示とは別のもの |
参考: 日本緩和医療学会「アドバンス・ケア・プランニングと意思決定支援」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について