第108回 看護師国家試験 午後 問116 解説
📝 問題
Aさん(70歳、男性)は、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉のため、気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受け、在宅で療養している。 退院から1週後に妻から訪問看護ステーションに連絡があり「人工呼吸器のアラームが鳴り続けていて、どうしたらいいのかわかりません。低圧アラームが点灯しています。気管カニューレも抜けていないし、呼吸もいつも通りにしているように見えます」と尋ねた。 この時の訪問看護師の妻への回答で正しいのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 人工呼吸器の低圧アラームは回路のリークを示すため、回路のゆるみがないか確認するよう回答する。
人工呼吸器の低圧(気道内圧低下)アラームは、設定圧に達しない=回路のどこかから空気が漏れていることを示す。 気管カニューレが抜けておらず呼吸も普段通りに見えるという状況では、まず回路の接続部のゆるみや外れがないかを確認するよう妻に伝えるのが正しい。 回路のゆるみ・外れは低圧アラームの最も一般的な原因であり、家庭でまず確認すべき点である。
人工呼吸器アラームは種類ごとに原因を整理する。 低圧アラーム=リーク(回路外れ・カフ漏れなど)、高圧アラーム=閉塞(喀痰貯留・回路屈曲・咳)が基本である。
他の選択肢は、高圧側か電源側の話で低圧アラームの説明にならない。 気管内吸引とウォータートラップの水抜きは、圧が上がりすぎたときの対処である。 電源プラグが抜ければ本体そのものが止まり、気道内圧が下がったという表示にはならない。
ウォータートラップとは
人工呼吸器の回路の途中に付ける、結露した水をためる容器。水がたまったままだと回路の抵抗が上がる。
- 1
「気管内の吸引を行ってください」不正解
気管内吸引は喀痰貯留による高圧アラーム時などの対応で、リークを示す低圧アラームへの第一の対処ではない。
- 2
「回路にゆるみがないか確認してください」正解
低圧アラームは回路のリークを示すため、接続部のゆるみや外れがないか確認するよう伝える。
- 3
「電源プラグが抜けていないか確認してください」不正解
電源プラグの確認は作動停止に関わるが、気道内圧低下を示す低圧アラームの主因ではない。
- 4
「ウォータートラップに水が溜まっていないか確認してください」不正解
ウォータートラップに水が溜まると回路抵抗が上がり高圧側の問題となり、低圧アラームの原因説明にはならない。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
人工呼吸器のアラームは「圧が上がらない=漏れ」「圧が上がりすぎ=詰まり」と覚えると原因を絞れる。
- ウォータートラップに水が溜まると回路抵抗が上がり高圧側の要因になる
- カフ圧は適正範囲を保つ(低すぎるとリークと誤嚥、高すぎると気管粘膜の虚血)
| アラーム | 主な原因 | 確認・対応 |
|---|---|---|
| 低圧(気道内圧下限) | 回路の外れ・ゆるみ、カフの漏れ、計画外抜管 | 接続部を順に確認、カフ圧を確認 |
| 高圧(気道内圧上限) | 喀痰貯留、回路の屈曲・閉塞、咳嗽、患者の体動 | 吸引、回路の確認、鎮静・体位の調整 |
| 分時換気量低下 | リーク、換気量不足 | 回路とカフ、患者の呼吸状態を確認 |
| 電源・バッテリー | 電源プラグの外れ、停電 | 電源を確認し、外部バッテリーに切り替える |
原因がすぐに特定できないときは、まず用手換気(バッグバルブマスク)に切り替える。
参考: 日本呼吸療法医学会「在宅人工呼吸療法の手引き」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について