第108回 看護師国家試験 午前 問96 解説
📝 問題
Aさん(37歳、女性、会社員)は、夫(38歳)と2人暮らし。身長155cm、体重57kg。Aさんは、入浴中に右胸のしこりに気づき、病院を受診した。乳房超音波検査で右乳房外側下部に、直径約3cmの腫瘤が認められた。医師から乳癌の可能性が高いと説明され、検査を受けたところ、右乳癌と診断された。 Aさんは、職場の上司と相談し、仕事を継続しながら化学療法を受けることになった。2サイクル目の治療のため、化学療法センターに来院した。Aさんは「1回目の治療のあと、数日間身体がだるくて食欲もなく、体重が1キロ減りました。仕事も休みました」と看護師に話した。身体所見:体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍70/分、血圧120/74mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%。検査所見:赤血球400万/μL、Hb12.5g/dL、Ht37%、白血球2,300/μL(好中球55%、単球5%、好酸球4%、好塩基球1%、リンパ球35%)、血小板18万/μL、総蛋白7.0g/dL、アルブミン4.5g/dL、尿素窒素13mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、CRP0.3mg/dL。 2サイクル目の化学療法を受けたAさんに行ってもらうセルフモニタリングで最も重要なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 好中球減少による易感染状態では、感染の早期指標として体温のセルフモニタリングが最も重要である。
化学療法の骨髄抑制で好中球が減ると、体は細菌を抑えこめなくなり、感染しても熱のほかに炎症のサインが出にくい。 Aさんは白血球2,300/μL、そこから計算した好中球数は約1,265/μL(2,300×0.55)で、すでに好中球が減っている。 好中球はこれから投与後7〜14日にかけてさらに下がる。その時期に熱が出れば発熱性好中球減少症として緊急の対応が要る。 自宅で仕事を続けながら治療するAさんが自分で異常に気づくには、毎日の検温が最も役に立つ。
他の3つも大切だが、感染の入り口を知らせる指標にはならない。 脈拍数や血圧が変わるのは、感染が全身に及んでからである。 体重は食欲の低下や体液量の目安になるが、感染の早期発見には結びつかない。
- 1
脈拍数不正解
脈拍数の変化も感染時にみられうるが、好中球減少下で最も重要かつ早期の感染指標は発熱の把握である。
- 2
体温正解
好中球が減っている間は、発熱が感染に気づく最初のサインになる。毎日決まった時間に体温を測り、発熱があればすぐ連絡してもらう。
- 3
血圧不正解
血圧は敗血症性ショックなど重症化時に変動するが、感染の早期発見の指標としては体温が優先される。
- 4
体重不正解
体重は食欲低下や体液量の把握には有用だが、易感染状態での最優先のセルフモニタリング項目ではない。
📚 国試でよく狙われるところ
化学療法中の発熱は、いつ・どの値から緊急になるかが問われる。 好中球の数と体温をセットで覚えよう。 発熱性好中球減少症〈FN〉は、好中球数500/μL未満(または1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満になると見込まれる)かつ腋窩温37.5℃以上と定義され、ただちに広域抗菌薬を始める緊急病態である。
- 好中球数=白血球数×(好中球%+桿状核球%)÷100
- 骨髄抑制の最低値(ナディア)は投与後7〜14日ごろで、回復には3〜4週かかる
- 好中球減少時は炎症反応が乏しく、発熱以外の感染徴候が出にくいため、体温の自己測定が要になる
- 感染予防の基本は手洗い・含嗽・口腔ケア・排便後の清潔保持・人混みを避けること。生ものや生花の扱いにも注意する
参考: 日本臨床腫瘍学会『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン』/医療情報科学研究所編『病気がみえる』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について