第108回 看護師国家試験 午前 問95 解説
📝 問題
Aさん(37歳、女性、会社員)は、夫(38歳)と2人暮らし。身長155cm、体重57kg。Aさんは、入浴中に右胸のしこりに気づき、病院を受診した。乳房超音波検査で右乳房外側下部に、直径約3cmの腫瘤が認められた。医師から乳癌の可能性が高いと説明され、検査を受けたところ、右乳癌と診断された。 Aさんは、乳房温存療法を希望したが、腫瘍が大きいため手術前に化学療法を受けることになった。術前化学療法としてEC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)を3週ごとに、4サイクル受ける予定である。 Aさんに起こりやすい障害はどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ シクロホスファミドを含むEC療法では性腺毒性により卵巣機能不全が起こりやすい。
EC療法(エピルビシン・シクロホスファミド)のうち、シクロホスファミド(アルキル化薬)は性腺毒性が強い。 卵巣の卵胞が障害されるため、月経が乱れたり止まったりし、卵巣機能不全や早発閉経に至ることがある。 Aさんは37歳で、これから妊娠を望む可能性がある年齢である。 治療を始める前に卵巣機能への影響と妊孕性温存の方法を伝え、本人が選べるようにしておくことが大切になる。
他の3つは、EC療法で起こりやすい障害ではない。 化学療法でよくみられるのは味覚の変化で、嗅覚障害は代表的な副作用ではない。 リンパ浮腫は腋窩リンパ節郭清や放射線療法のあとに起こる合併症である。 末梢神経障害はタキサン系やプラチナ製剤で特徴的にみられる。
もう一方のエピルビシンはアントラサイクリン系で、心毒性と脱毛が代表的な副作用である。
妊孕性とは
妊娠する力のこと。抗がん薬や放射線で卵巣・精巣が傷つくと低下するため、治療を始める前に温存の方法を伝える。
- 1
嗅覚障害不正解
嗅覚障害はEC療法で特徴的にみられる有害事象ではない。
- 2
リンパ浮腫不正解
リンパ浮腫は腋窩リンパ節郭清や放射線療法に伴う合併症であり、術前化学療法そのものによる障害ではない。
- 3
卵巣機能不全正解
シクロホスファミドの性腺毒性で卵巣の卵胞が障害され、無月経や早発閉経といった卵巣機能不全が起こりやすい。
- 4
末梢神経障害不正解
末梢神経障害はタキサン系やプラチナ製剤で特徴的であり、EC療法の主薬による代表的障害ではない。
📚 国試でよく狙われるところ
抗がん薬は、薬剤名と特徴的な有害事象の組合せを入れ替えて問われる。 若い患者では、そこに妊孕性への影響と支援がセットで加わる。 薬の系統と副作用、そして治療前に何を伝えるかを1組にして覚えよう。
- 妊孕性温存には受精卵(胚)凍結、未受精卵子凍結、卵巣組織凍結があり、治療開始前に情報提供して意思決定を支えることが重要
- 妊孕性に関する話し合いは、がん治療を遅らせないよう早期に生殖医療の専門施設と連携して進める
| 薬剤(系統) | 特徴的な有害事象 |
|---|---|
| シクロホスファミド(アルキル化薬) | 出血性膀胱炎、性腺毒性(卵巣機能不全・無精子症)、骨髄抑制 |
| アントラサイクリン系(ドキソルビシン、エピルビシン) | 心毒性(総投与量に依存)、脱毛、血管外漏出で強い組織壊死 |
| タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル) | 末梢神経障害、過敏反応、脱毛、関節痛・筋肉痛 |
| プラチナ製剤(シスプラチン) | 腎障害、強い悪心・嘔吐、聴力障害、末梢神経障害 |
| ビンカアルカロイド(ビンクリスチン) | 末梢神経障害、便秘・イレウス |
| ブレオマイシン | 間質性肺炎・肺線維症 |
| メトトレキサート | 口内炎、骨髄抑制、腎障害 |
参考: 日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン』/日本癌治療学会『小児・思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について