第107回 看護師国家試験 午後 問89 解説
📝 問題
A さん(65歳、女性)は、5年前に乳癌の左胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節郭清術を受けた。1年前に大腿骨転移のため日常生活動作〈ADL〉に一部介助が必要となり、訪問看護を利用し在宅で療養している。A さんの左上腕内側の皮膚をつまむと健側より厚みがある。 訪問看護師が A さんに指導する左上腕のケア方法で正しいのはどれか。2つ選べ。
✅ 正解
2・3
💡 解説
✅ リンパ浮腫のある上肢は、皮膚の露出を少なくし、保湿クリームを塗って守る。
腋窩リンパ節郭清を受けた側の上肢はリンパ浮腫を生じやすく、蜂窩織炎などの感染をきっかけに悪化する。 ケアの基本はスキンケアと、感染・外傷の予防である。 保湿クリームで皮膚のバリア機能を保ち、露出を控えて虫刺され・外傷・日焼けから患肢を守る。
他の選択肢は、いずれも皮膚を傷める。 強い指圧は組織を痛め、ナイロン製タオルでこすれば細かい傷ができる。 アルカリ性石けんは皮膚の脂を落としすぎて乾燥を招く。
蜂窩織炎とは
皮膚の下の組織まで細菌が広がって起こる感染症。むくんだ皮膚は小さな傷から菌が入りやすい。
- 1
指圧する。不正解
強い指圧は皮膚や組織を傷めるおそれがある。リンパドレナージは、皮膚を軽くさする程度の弱い力で行う。
- 2
皮膚の露出は少なくする。正解
露出を控えると外傷・虫刺され・日焼けから患肢を守ることができ、感染と増悪の予防になる。
- 3
保湿クリームを塗布する。正解
保湿クリームで皮膚のバリア機能を保つことは、乾燥や感染を防ぐスキンケアの基本である。
- 4
ナイロン製タオルで洗う。不正解
ナイロン製タオルでこすると皮膚を傷つけ、感染のきっかけになる。やわらかい素材で泡をなでるように洗う。
- 5
アルカリ性石けんで洗浄する。不正解
アルカリ性石けんは皮膚を乾燥させ、刺激になる。弱酸性の低刺激な石けんを選ぶ。
📚 ここも一緒におさえておこう
リンパ浮腫は、予防と悪化させない工夫がそのまま指導内容として問われる。 治療の基本は複合的治療(複合的理学療法)で、日常のセルフケア指導がその要になる。
- 複合的治療の柱はスキンケア・用手的リンパドレナージ・圧迫療法・圧迫下の運動
- 患側では血圧測定・採血・点滴を避ける
- 皮膚を清潔・保湿に保ち、虫刺され・日焼け・熱傷・切創など小さな傷も避ける
- 蜂窩織炎を起こすと発赤・熱感・発熱を生じ浮腫が悪化する。発症時は速やかに受診し、急性期はドレナージを中止する
- 締めつける衣類・アクセサリー、患肢での重い荷物の保持は避ける
参考: 日本リンパ浮腫学会「リンパ浮腫診療ガイドライン」/系統看護学講座 成人看護学(がん看護)
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について