第107回 看護師国家試験 午後 問63 解説
📝 問題
A さん(75歳、男性)。1人暮らし。慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉のため、2年前から在宅酸素療法を開始し、週に2回の訪問看護を利用している。訪問看護師は A さんから「最近、洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れるが、自分でできることは続けたい」と相談された。 A さんの労作時の息苦しさを緩和する方法について、訪問看護師が行う指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 労作時の息苦しさには、腕を上げるときに息を吐きながら動作するよう指導するのが適切である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD〈シーオーピーディー〉)では労作時、特に上肢挙上を伴う動作(洗濯物干し、洗髪など)で呼吸困難が増強しやすい。 上肢挙上は呼吸補助筋の動きを制限し、また努責により息こらえが起こりやすいため、動作の負荷がかかる局面(腕を上げる時)に合わせて口すぼめ呼吸でゆっくり息を吐くことで、気道の虚脱を防ぎ換気を保ちながら動作できる。 動作と呼吸を同調させる「呼吸同調法」が指導の基本である。
国試では COPD の呼吸法として「口すぼめ呼吸」「呼気を長く(吸気:呼気=1:2程度)」「動作に合わせて息を吐く」が正答パターン。 労作時に安易に酸素流量を上げる、吸気を長くする、短速呼吸をする、といった選択肢は誤りとして頻出するので、呼気延長と動作同調をセットで押さえる。
CO2ナルコーシスとは
二酸化炭素をうまく吐き出せない人に高い濃度の酸素を投与したとき、呼吸が浅く弱くなって意識障害を起こす状態。
- 1
労作時は酸素流量を増やす。不正解
酸素流量は医師の指示で決められており、労作時であっても自己判断で増量してはならない。CO2ナルコーシスの危険もある。
- 2
呼吸は呼気より吸気を長くする。不正解
COPD では呼気の延長(口すぼめ呼吸)が基本で、吸気ではなく呼気を長くして気道虚脱を防ぐ。
- 3
動作に合わせて短速呼吸をする。不正解
短速呼吸は換気効率が悪く息苦しさを悪化させる。ゆっくりした深い呼吸が適切。
- 4
腕を上げるときは息を吐きながら行う。正解
上肢挙上など負荷のかかる動作に合わせて息を吐く(口すぼめ呼吸)ことで気道虚脱を防ぎ、息苦しさを緩和できる。適切。
📚 ここも一緒におさえておこう
COPDの呼吸リハビリテーションでは、呼吸法・動作要領・在宅酸素療法の管理をセットで指導する。
- 口すぼめ呼吸は気道内圧を高めて末梢気道の虚脱を防ぐため、呼気時に行う
- 腹式(横隔膜)呼吸と組み合わせ、呼気を吸気の2倍程度かけてゆっくり吐く
- 息切れを起こしやすい動作は上肢挙上・前かがみ・いきみ・反復動作の4つ
- 在宅酸素療法では流量を自己判断で変更しない、火気から2m以上離す、が基本指導
- 動作を分割して途中で休息を入れる「ペーシング」も労作時呼吸困難の軽減に有効
参考: 日本呼吸器学会「COPD診断と治療のためのガイドライン」/系統看護学講座 在宅看護論
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について