第107回 看護師国家試験 午後 問109 解説
📝 問題
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。 A さん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。A さんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、A さんは強迫性障害と診断された。母親は、A さんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。A さんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院後、A さんは主治医と話し合い、1日の手洗いの回数を決めたが、毎日その回数を超えて手洗いを続けている。看護師が確認するといつも洗面所にいる。 A さんが決めた回数を超えて洗面所で手洗いを続けているときに、看護師がとる対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 決めた回数を超えて手洗いを続けているときは、その行動についてAさんと一緒に話し合う対応が適切である。
強迫性障害では、強い不安を打ち消すために強迫行為(手洗い)を繰り返す。 決めた回数を超えてしまうAさんには、行為を頭ごなしに止めるのではなく、なぜ続けてしまうのか、そのとき何が不安なのかを一緒に話し合う。 自分の行動と不安を言葉にできるようになると、曝露反応妨害法などの治療に本人から取り組めるようになる。
他の3つは、いずれも本人の不安に触れないまま行為だけを扱っている。説得で強迫観念は消えず、隔離は行動制限にあたり、回数を増やす約束は治療の目標と逆を向く。 強迫性障害の看護では、行為を責めず、不安に寄り添い、本人と一緒に段階的に減らしていく姿勢が問われる。
強迫観念とは
頭から離れない不安な考え。「手が汚れている」など、打ち消そうとしても浮かんでくる。
曝露反応妨害法とは
不安になる場面にあえて身を置き、手洗いなどの強迫行為をしないまま待つ練習。不安が自然に下がる体験を積み重ねる。
- 1
手洗いを続けてしまうことについて A さんと一緒に話し合う。正解
手洗いを続けてしまう理由や不安を本人と一緒に話し合うことは、自己理解と治療参加を支える適切な対応。
- 2
病棟は清潔であることを A さんに説明する。不正解
強迫観念は論理的説得では消えず、「清潔だ」と説明しても効果に乏しい。
- 3
主治医に A さんの隔離について相談する。不正解
隔離は行動制限であり、強迫行為が止められない状態への対応としては適応外である。
- 4
A さんと決めた手洗いの回数を増やす。不正解
決めた回数を増やすのは、強迫行為を減らすという治療目標に逆行する。
📚 ここも一緒におさえておこう
強迫性障害は、不合理と分かっていてもやめられない強迫観念と強迫行為からなる。治療も看護も「行為をやめさせる」ではなく「不安を減らす」向きで組み立てる。
- 治療はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)+認知行動療法(曝露反応妨害法)
- 強迫行為を力ずくで止めると不安が高まり悪化する。段階的に減らす目標を本人と共有する
- 家族が確認に付き合う(巻き込み)と症状が維持されるため、家族への説明も重要
- 手洗いによる皮膚の荒れなど身体的な二次障害の観察とケアも看護の役割
| 強迫観念 | 対応する強迫行為 |
|---|---|
| 汚染への恐怖(不潔恐怖) | 過剰な手洗い・入浴・洗濯 |
| 確認したい衝動 | 戸締まり・火元・ガス栓の反復確認 |
| 対称性・正確性へのこだわり | 物を決まった順や位置に並べ直す |
| 加害恐怖 | 繰り返し謝る、他者に確認を求める |
参考: 日本精神神経学会「強迫症の治療ガイドライン」
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について