第106回 看護師国家試験 午後 問69 解説
📝 問題
Aさん(61歳、男性)は、水分が飲み込めないため入院した。高度の狭窄を伴う進行食道癌と診断され、中心静脈栄養が開始された。入院後1週、Aさんは口渇と全身倦怠感を訴えた。意識は清明であり、バイタルサインは脈拍108/分、血圧98/70mmHgであった。尿量は1,600mL/日で、血液検査データは、アルブミン3.5g/dL、AST〈GOT〉45IU/L、ALT〈GPT〉40IU/L、クレアチニン1.1mg/dL、血糖190mg/dL、Hb11.0g/dLであった。Aさんの口渇と全身倦怠感の要因として最も考えられるのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ Aさんの口渇と全身倦怠感の要因として最も考えられるのは高血糖である。
中心静脈栄養では、必要な熱量を確保するために高い濃度のブドウ糖を持続的に入れる。体が使える速さを超えて入ると血糖が上がり、血糖190mg/dLはその状態を示している。
血糖が高いと、余った糖が尿へ出るときに水を一緒に引き連れて出ていく。これが浸透圧利尿で、体の水分が減るため口渇・全身倦怠感・頻脈が現れる。尿量が1,600mL/日と保たれたまま脱水が進むのはこのためで、脈拍108/分と血圧98/70mmHgもここから説明がつく。
他の検査値は症状の主な原因になりにくい。アルブミン3.5g/dLとヘモグロビン11.0g/dLはわずかな低下、AST45IU/L・ALT40IU/Lも軽い上昇にとどまり、クレアチニン1.1mg/dLはほぼ基準の範囲にある。
浸透圧利尿とは
血液中に増えすぎた糖などが尿へ出るとき、水を一緒に引き連れて出ていくために尿量が増えること。体の水分が減って口渇が強くなる。
- 1
貧血不正解
ヘモグロビン11.0g/dLは軽い貧血にあたる。貧血で出るのは動悸・息切れ・顔色不良で、口渇はこれでは説明できない。
- 2
低栄養不正解
アルブミン3.5g/dLは基準をわずかに下回る程度で、中心静脈栄養も始まっている。低栄養だけで入院後1週に口渇が現れる経過ではない。
- 3
高血糖正解
血糖190mg/dLは高く、尿へ出ていく糖が水を奪うため脱水になり、口渇と全身倦怠感が生じる。
- 4
腎機能障害不正解
クレアチニン1.1mg/dLはほぼ基準の範囲で、尿量も1,600mL/日と保たれている。腎機能の低下を示す所見はない。
- 5
肝機能障害不正解
AST45IU/L・ALT40IU/Lは軽い上昇にとどまる。肝機能障害で目立つのは黄疸や出血傾向である。
📚 ここも一緒におさえておこう
中心静脈栄養は、起こりやすい合併症とその見つけ方が問われる。糖・感染・栄養素の3つに分けて覚えよう。
- 高濃度のブドウ糖を入れるため高血糖になりやすく、定期的な血糖測定とインスリンでの調整が必要になる
- 急に中止すると低血糖を起こすことがあるため、やめるときは速度を少しずつ落とす
- カテーテルが血管内に長く入るのでカテーテル関連血流感染の危険があり、挿入部の観察と清潔操作が欠かせない
- 長く続けるとビタミンB1が不足して乳酸アシドーシスを起こすことがあり、ビタミンの補給を欠かさない
参考: 日本臨床栄養代謝学会による静脈経腸栄養の指針/成人看護学(代謝・栄養)の標準的な教科書
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について