第104回 看護師国家試験 午後 問91 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(45歳、男性)は、便に血液が混じっていたため受診した。検査の結果、直腸癌と診断され、自律神経を部分温存する低位前方切除術が予定されている。 術後に予測されるのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 自律神経を部分温存する低位前方切除術では、術後に排尿障害が予測される。
直腸は骨盤の奥にあり、そのすぐそばを排尿と性機能をつかさどる骨盤内の自律神経が走っている。 低位前方切除術ではこの神経をできるだけ残すが、部分温存なので一部は傷つく。
神経が傷つくと、膀胱に尿がたまったことが伝わらず、膀胱を縮める力も落ちる。 尿意が分かりにくくなり、出しきれずに残尿が増える。術後は残尿量の測定や導尿で経過をみる。
他の選択肢は別の術式で起こるもの。ダンピング症候群と輸入脚症候群は胃を切除したあとの合併症で、ストーマの陥没は人工肛門を造った場合に問題になる。
低位前方切除術とは
直腸のがんを切り取り、残った腸と肛門側の腸をつなぎ直す手術。肛門を残せるのが特徴。
- 1
排尿障害正解
骨盤内の自律神経が手術で傷つくと、尿意が分かりにくくなり残尿が増える。低位前方切除術のあとに最も注意する障害である。
- 2
輸入脚症候群不正解
輸入脚症候群は、胃を切除したあとに食物が通らない側の腸管へ消化液がたまって起こる。直腸の手術では生じない。
- 3
ストーマの陥没不正解
ストーマの陥没は人工肛門を造ったときに起こる問題。低位前方切除術でも一時的に人工肛門を置くことはあるが、肛門を残す術式なので、術後にまず予測される障害ではない。
- 4
ダンピング症候群不正解
ダンピング症候群は胃を切除したあと、食物が急に小腸へ流れ込むために起こる。胃の手術に特有の症状である。
📚 混同しやすいので注意
直腸癌の手術は、切る範囲で残る障害が変わる。術式の名前と、そのあとに起こることを対にして覚えよう。
- 低位前方切除術は肛門を残す術式。骨盤内の自律神経が傷つくと排尿障害や性機能障害が、直腸の容量が減ると排便回数の増加や便失禁が起こる。
- 肛門ごと切除する腹会陰式直腸切断術では永久的な人工肛門を造り、ストーマの管理が退院指導の中心になる。
- 低位前方切除術でも、つなぎ目を守るために一時的な人工肛門を造ることがある。数か月後に閉じる。
参考: 大腸癌治療ガイドライン(大腸癌研究会)/成人看護学 消化器疾患の術後看護
出典:「第104回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について