第103回 看護師国家試験 午後 問111 解説
📝 問題
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(32歳、男性、会社員)は、2年前にうつ病による入院歴がある。Aさんは仕事中に「新しい営業戦略を考えついた」と上司に大声でまとまりのない話を続け、止めようとすると激怒するようになった。会社から連絡を受けたAさんの両親に付き添われて精神科を受診したところ、Aさんは双極性障害と診断され入院した。 入院後1週間が経過し、Aさんの食事摂取量は増えたが、他の患者への過度な干渉や、自宅への頻繁な電話は続いている。Aさんは「以前は仕事をしすぎて疲れただけで病気ではない。今すぐ退院して仕事に戻りたい」と話しているが、主治医は退院を許可していない。 看護師の対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ Aさんと一緒に、いまできていることと難しいことを一つずつ確かめていく。
Aさんは「病気ではない」と話しており、自分の状態を病気として受けとめられていない。他の患者への干渉や頻繁な電話も続いていて、症状は残ったままである。
ここで否定や説得を重ねると、責められたと感じて対立が深まる。 本人と一緒に、いまできていることと難しいことを一つずつ確かめると、Aさん自身が現実とのずれに気づき、治療に向かう足がかりになる。病識は説得ではなく、こうしたやりとりを重ねて育つ。
残る3つは、Aさんとの関係をかえって損なう。
病識とは
自分が病気であり、治療が必要だと理解できていること。躁状態では乏しくなりやすい。
- 1
Aさんの上司に配置転換を相談する。不正解
職場への働きかけは本人の同意を得て、症状が落ち着いてから行う。看護師が先に上司へ連絡すればプライバシーを侵すことにもなる。
- 2
Aさんに入院前の言動の問題点を指摘する。不正解
問題点の指摘は非難と受け取られ、反発を強める。事実は責める形ではなく、本人と確かめ合う形で扱う。
- 3
Aさんの両親に入院の継続を説得してもらう。不正解
両親に説得役を任せると、Aさんと家族の関係が壊れる。家族には病状と対応の仕方を伝え、支える側に回ってもらう。
- 4
Aさんと現時点で可能なことや困難なことを確認する。正解
できること・難しいことを一緒に整理すると、Aさんが自分の状態を具体的につかめる。退院に向けて何が必要かを、本人と一緒に考えられるようになる。
📚 ここも一緒におさえておこう
精神科の事例では「本人を抜きにして決める」選択肢が誤りになりやすい。選択肢の主語が本人か、家族や職場かをまず見よう。
- 病識が乏しい人には、正しさを説いて納得させるのではなく、本人が困っている事実から話を始める
- 躁状態が治まる時期には気分がうつに転じることがあり、自責感や自殺念慮に注意する
- 退院の話し合いでは、生活のどこに支えが要るかを本人と具体的に挙げてから、家族や職場に伝える
参考: 標準的な精神看護学(双極性障害の回復期の看護)
出典:「第103回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について