第114回 看護師国家試験 午後 問93 解説

状況設定在宅看護論✔ 監修済み

📝 問題

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。 Aさん(88歳、男性)は妻(82歳)と2人で暮らしている。息子2人は独立して生活している。要介護度は5で、エアマットレスを使用している。食事は妻の介助で1日1回ペースト食を食べているがむせることもあり、食事が全くとれない日もある。排泄はオムツを使用し、毎日訪問介護サービスを利用して、オムツ交換と陰部洗浄を受けている。訪問看護は週3回利用している。Aさんは妻が話しかけると返事はするが自発的な会話はない。着替えをするときに上肢を動かすと苦痛表情がある。 Aさんは声をかけても返答したり目を開けたりすることもなく、穏やかな表情で眠っていることが多くなった。Aさんの妻は「夫は話しかけても何も答えてくれないので、どうしたらよいか分かりません」と訪問看護師に話した。 このときの妻への声かけで適切なのはどれか。

✅ 正解

1

💡 解説

✅ 返事がなくても、体に触れて関わることを勧める。

Aさんは呼びかけに反応せず、穏やかな表情で眠っていることが多くなった。死が近い時期の自然な経過である。

妻の「どうしたらよいか分かりません」は、関わりたいのに方法が分からないという訴えである。だから看護師は具体的にできることを示す必要がある。終末期でも聴覚や触覚は最後まで保たれやすいといわれ、手を握る・体をさするといった関わりは、言葉が返らなくても成り立つ。

触れることは妻自身にとっても意味がある。「何もしてあげられなかった」という後悔が減り、死別後の悲しみをやわらげる。清拭や口の中を潤すケア、好きだった音楽をかけることなど、妻が主役になれるケアを一緒に組み立てるとよい。

  • 1

    「Aさんの体にできるだけ触れるようにしましょう」正解

    触れる関わり(タッチング)は、意識が低下していても届く可能性のある言葉によらないコミュニケーションで、妻がいますぐ実行できる。「そばにいる」という思いを具体的な行動に変えられる。

  • 2

    「Aさんは苦痛を感じることはありません」不正解

    苦痛がないと言い切る根拠はない。看取り期でも、体位による痛みや口の乾き、息苦しさは起こりうる。安易な保証は、実際に苦痛のサインが出たときに妻の信頼を損なう。

  • 3

    「Aさんが休めるよう静かにしましょう」不正解

    静かにさせることは、関わりたいという妻の気持ちを閉ざしてしまう。声かけは刺激ではなく関わりであり、Aさんに届いている可能性を踏まえれば控えさせる理由はない。

  • 4

    「Aさんの世話を頑張りましょう」不正解

    「頑張りましょう」では何をすればよいか分からず、82歳で介護を担う妻にはさらに頑張れという圧力にもなる。「どうしたらよいか」という問いへの答えになっていない。

📚 ここも一緒におさえておこう

看取りが近づいたときに現れる変化は、前もって家族に伝えておく。

  • グリーフケアは死別後だけでなく、看取りの過程からすでに始まっている
  • 家族が「できることをした」と感じられる関わりを用意することが、死別後の悲しみをやわらげる
死が近づいたときの徴候と家族への説明
徴候説明のしかた
傾眠・呼びかけへの反応低下自然な経過で、苦しくて眠っているわけではないこと
食事・水分がとれない身体が必要としなくなるためで、無理に入れると苦しくなること
下顎呼吸・チェーンストークス呼吸苦しさの表れではなく、最期が近いサインであること
四肢の冷感・チアノーゼ・血圧低下循環が保てなくなる自然な変化であること
死前喘鳴(ゴロゴロ音)分泌物が咽頭に溜まる音で、本人の苦痛は少ないこと

参考: 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)

出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について

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