第113回 看護師国家試験 午前 問91 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。 Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI 33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折と診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。 Aさんの術後に最も注意すべき所見はどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 術後の下肢深部静脈血栓症を示唆するのは、足関節を背屈させると腓腹部に痛みが出るHomans〈ホーマンズ〉徴候である。
人工股関節置換術のあとは、下肢の血流がうっ滞し、手術で血管が傷つき、血液も固まりやすくなる。この3つがそろうため、深部静脈血栓症が最も警戒すべき合併症になる。血栓がはがれて肺へ飛ぶと肺血栓塞栓症を起こす。 Aさんは体格指数(BMI〈ビーエムアイ〉)33の肥満で、術後の安静・不動も重なるため危険度が高い。
Homans〈ホーマンズ〉徴候は、足関節を背屈させたときに腓腹部(ふくらはぎ)へ痛みが出る所見で、下腿の深部静脈血栓症を示唆する。下肢の腫脹・熱感・色調の左右差もあわせて観察する。
- 1
Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候不正解
Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候は無痛性に腫大した胆嚢を触れる所見で、膵頭部癌などによる閉塞性黄疸を示唆し、本問とは無関係である。
- 2
Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候不正解
Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候(反跳痛)は腹膜刺激症状で、腹膜炎・虫垂炎などを示唆し、股関節術後の警戒所見ではない。
- 3
Homans〈ホーマンズ〉徴候正解
Homans〈ホーマンズ〉徴候は足関節背屈時の腓腹部痛で下肢深部静脈血栓症を示唆し、肥満・術後不動のAさんで最も注意すべき所見である。
- 4
Romberg〈ロンベルグ〉徴候不正解
Romberg〈ロンベルグ〉徴候は閉眼時の立位動揺で、脊髄後索障害など深部感覚・平衡機能の障害を示す所見であり、術後の深部静脈血栓症の評価には用いない。
📚 これとセットで理解しよう
深部静脈血栓症は、なぜできるのかがわかると、予防のケアも危ないタイミングもつながって覚えられる。人名のついた徴候は、どの病気を示すかで整理しよう。
- 深部静脈血栓症の3要因(Virchow〈ウィルヒョウ〉の三徴)=血流のうっ滞・血管内皮の障害・血液凝固能の亢進。手術・肥満・長期臥床はすべてこれに当たる。
- 予防は早期離床・足関節の自動運動・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法・抗凝固薬。
- 肺血栓塞栓症は初回歩行時や排便後など、動き始めに突然の呼吸困難・胸痛・経皮的動脈血酸素飽和度の低下として発症しやすい。
| 徴候 | 所見 | 示唆する病態 |
|---|---|---|
| Homans〈ホーマンズ〉徴候 | 足関節を背屈させると腓腹部に疼痛が生じる | 下肢深部静脈血栓症 |
| Blumberg〈ブルンベルグ〉徴候(反跳痛) | 圧迫した手を急に離すと痛みが強まる | 腹膜刺激症状(腹膜炎、虫垂炎) |
| Murphy〈マーフィー〉徴候 | 右季肋部を圧迫しながら深呼吸させると痛みで吸気が止まる | 急性胆嚢炎 |
| Courvoisier〈クールボアジェ〉徴候 | 無痛性に腫大した胆嚢を触知する | 膵頭部癌などによる閉塞性黄疸 |
| Romberg〈ロンベルグ〉徴候 | 閉眼で立位の動揺が増強する | 脊髄後索障害(感覚性失調) |
参考: 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン
出典:「第113回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について