第108回 看護師国家試験 午前 問98 解説
📝 問題
Aさん(68歳、女性)は、1人暮らし。隣の市に娘がいる。日常生活は自立している。10年前に糖尿病と診断され、血糖降下薬を服用している。最近の血液検査でHbA1cが8.5%のため、インスリンの自己注射を導入するかどうかを検討することになった。医師からAさんには自己注射についてまだ説明されていない。 Aさんは、医師から自己注射について説明された。Aさんは医師に質問はないと答えたが、考え込んでいたため、看護師はAさんに心配なことがあるか質問した。Aさんは「10年間、食事療法をがんばってきたのに、注射になるのですね。今後どうしたら良いかわからなくなりました」と話した。 この時の看護師の言葉かけで適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ これまでの食事療法の努力を否定せず、工夫を一緒に振り返る言葉かけが最も適切である。
10年間食事療法を続けてきたのに注射が必要になったという事実に、Aさんは自分の努力が無駄だったのではないかという喪失感・自己否定を抱いている。 ここで必要なのは、これまでの努力を認め肯定的にとらえ直す支援である。 『これまでの食事で工夫したことを一緒に振り返りましょう』という言葉かけは、頑張りを承認したうえで、その経験をこれからの療養に活かせるものとして再意味づけする関わりになる。
他の3つは、Aさんの気持ちを受け止める前に、評価や解決策を差し出している。 努力が足りなかったと受け取れる言い方、感情に触れないままの配食サービスの提案、指導者本位の言い切りは、いずれも自己否定を強めかねない。 まず気持ちを受け止め、これまでの努力を承認するのが基本である。
- 1
「もう少しがんばれると良かったですね」不正解
『もう少しがんばれると良かった』は努力不足を責める含みがあり、自己否定を強める不適切な言葉かけである。
- 2
「治療食の配食サービスを利用しましょう」不正解
配食サービスの提案は具体策だが、Aさんの喪失感に寄り添う前の一方的な解決策である。
- 3
「私たちの指導通りに行えばうまくいきます」不正解
『指導通りに行えばうまくいく』は指導者本位で、患者の努力や思いを受け止めておらず不適切である。
- 4
「これまでの食事で工夫したことを一緒に振り返りましょう」正解
これまでの食事の工夫を一緒に振り返る言葉かけは、患者の努力を承認し、経験を今後に活かす支援であり、最も適切である。
📚 ここも一緒におさえておこう
2型糖尿病は膵β細胞の機能が徐々に低下する進行性の疾患であり、経過とともにインスリン療法が必要になることは治療の失敗ではない。 病気の自然な経過であり、必要な時期に必要な治療へ進んだということ。 この事実を伝えることが、患者の自責感をやわらげる。
- エンパワメントは、患者が自ら選び自己管理する力を引き出す支援。指示や説得ではなく、対話と承認が土台になる
- 自己効力感(セルフエフィカシー)を高める4つの源は、遂行行動の達成・代理的経験・言語的説得・生理的情動的状態
- バーンアウト(糖尿病燃え尽き)を防ぐため、努力の過程を評価し、目標は本人が達成可能な大きさに刻む
参考: 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド』/日本糖尿病教育・看護学会編『糖尿病看護ケアガイド』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について