第108回 看護師国家試験 午前 問93 解説
📝 問題
Aさん(20歳、男性、大学生)は、炎天下で長時間サッカーをしていたところ転倒し、左膝と左側腹部を強打した。「左膝がカクッと折れて力が入らない。左腹部が痛い」ことを主訴に救急外来を受診した。受診時のバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数14/分、脈拍98/分、血圧102/58mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%。血液検査の結果、赤血球550万/μL、Hb16.0g/dL、Ht55%、白血球8,900/μL、CRP0.3mg/dLであった。尿検査は尿潜血(-)、尿比重1.025、濃縮尿であった。胸部・腹部・下肢のエックス線写真に異常なし。胸腹部CTでは脾臓損傷を否定できなかった。このため、左半月板損傷と外傷性脾臓損傷を疑い入院となった。 医師による診察の結果、退院は中止になり、入院後5日に膝関節鏡を用いた手術を受けた。手術後1週の診察で退院が決まり、医師から「取り外し可能なギプスを装着し、次の受診まで松葉杖を使い左足には負荷をかけないで生活をしてください」と説明された。 看護師がAさんに行う退院指導で、正しいのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 免荷中でも筋萎縮を防ぐため、関節を動かさない等尺性運動(大腿四頭筋のセッティング)を実施する。
「左足に負荷をかけない」とは、その足に体重を乗せないこと(免荷)である。 免荷を守りながら筋力を保つには、関節の角度を変えずに筋だけを縮める等尺性運動(アイソメトリック運動)が適している。 膝を伸ばしたまま太ももに力を入れる大腿四頭筋のセッティングがその代表で、関節に負担をかけずに筋萎縮を防げる。
他の3つは、免荷や術後の安静を破ってしまう。 「痛くない程度なら体重をかけてよい」という自己判断では免荷にならない。 膝の屈伸を繰り返せば、手術で修復した部分に負担がかかる。 松葉杖を腋窩に密着させると、腋窩を走る神経を圧迫する。
免荷とは
けがや手術をした足に体重をかけないこと。松葉杖や車椅子を使い、その足を守りながら生活する。
- 1
「負荷をかけない」とは痛くない程度に体重をかけることである。不正解
「負荷をかけない」は免荷を意味し、痛くない程度でも体重をかけてよいという解釈は誤りである。
- 2
患側膝関節の屈曲伸展を繰り返す運動をしてよい。不正解
術後早期の患側膝の屈伸反復は修復部に負担をかけるため避けるべきで、適切な指導ではない。
- 3
患側下肢の等尺性運動を実施する。正解
等尺性運動は関節を動かさずに筋を縮めるため、免荷を保ったまま筋萎縮を防げる。
- 4
松葉杖は腋窩に密着させる。不正解
松葉杖を腋窩に密着させると腋窩部を走行する橈骨神経や血管を圧迫し、橈骨神経麻痺(下垂手)の危険があるため、腋窩には指2〜3本分の隙間を空ける。
📚 ここも一緒におさえておこう
免荷の指示が出たときは、松葉杖の使い方と、関節を動かさずに筋力を保つ方法がセットで問われる。 杖の当て方と筋収縮の種類を対にして覚えよう。
- 松葉杖の長さは身長から約40cmを引いた長さが目安で、杖先は足先の前外側に置く
- 体重は腋窩ではなく握り(グリップ)で支える。腋窩当てと腋窩の間は指2〜3本分あける
- 階段は昇りは健側から、降りは患側(と杖)からが原則
| 種類 | 関節の動き | 例 |
|---|---|---|
| 等尺性収縮(アイソメトリック) | 関節を動かさない | 大腿四頭筋セッティング、ギプス固定中の筋力維持、壁押し |
| 等張性収縮(アイソトニック) | 一定の負荷で関節を動かす | ダンベル運動、スクワット |
| 等速性収縮(アイソキネティック) | 一定の速度で関節を動かす | 専用機器を用いた訓練 |
参考: 医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科』/日本整形外科学会『松葉杖の正しい使い方』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について