第107回 看護師国家試験 午前 問94 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(55歳、男性)。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は300mLで、輸血は行われなかった。既往歴に特記すべきことはない。入院時身長166cm、体重78kg。手術後1日、硬膜外持続鎮痛法が行われているが、Aさんは創部痛が強いため呼吸が浅く、離床はできていない。このときのバイタルサインは、体温37.1℃、呼吸数22/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)93%(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下)。Hb 13.8g/dL。尿量60mL/時。意識清明、心音および呼吸音に異常なし。頸静脈怒張なし。下肢に浮腫なし。創部に熱感や発赤を認めない。腹腔ドレーンからは少量の淡血性排液があるが、膿性ではなく、異臭もない。 このときのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 創部痛が強いことで交感神経が緊張し、疼痛のため血圧が上昇していると判断するのが適切である。
術後1日で創部痛が強く、血圧162/90mmHg・脈拍120/分・呼吸数22/分と交感神経緊張を示すバイタルサインが揃っている。 硬膜外鎮痛が不十分で疼痛が持続すると、交感神経が刺激されて血圧上昇・頻脈・浅い呼吸を来す。 高血圧の主な原因は疼痛と考えられる。
他の選択肢は所見で否定できる。Hb13.8g/dLと貧血はなく、創部に感染徴候(熱感・発赤)はなく、心音・呼吸音正常で頸静脈怒張・下肢浮腫もない。 術後のアセスメントでは、複数のバイタル異常を「共通の原因で説明できるか」で考える視点が大切である。
硬膜外鎮痛とは
背中から硬膜の外側に細い管を入れ、鎮痛薬を持続的に送り込む方法。効きが足りないと痛みで呼吸が浅くなる。
- 1
貧血のため脈拍が速い。不正解
Hb13.8g/dLと貧血はなく、術中出血も少量で輸血は不要だったため、頻脈は貧血では説明できない。
- 2
疼痛のため血圧が高い。正解
強い創部痛による交感神経緊張が血圧上昇・頻脈・浅い呼吸を説明でき、疼痛のため血圧が高いと判断するのが適切である。
- 3
創部感染のため体温が高い。不正解
体温37.1℃は軽度で、創部に熱感・発赤がなくドレーン排液も膿性でないため、創部感染とは考えにくい。
- 4
心不全のため呼吸数が多い。不正解
心音・呼吸音正常、頸静脈怒張なし、下肢浮腫なしで心不全所見を欠き、呼吸数増加は心不全では説明できない。
📚 ここも一緒におさえておこう
術後の痛みは、我慢させると合併症につながる。評価の仕方と鎮痛の管理をひとつづきで覚えよう。 術後疼痛は交感神経を緊張させ、血圧上昇・頻脈・浅い呼吸・離床の遅れを招く。その結果、無気肺や肺炎、静脈血栓塞栓症、創治癒の遅延につながる。
- 痛みの評価にはNRS(0〜10の数値評価スケール)やVAS、フェイススケールを用い、安静時と体動時の両方を評価する
- 硬膜外鎮痛の効果が不十分なときは、カテーテルの位置異常・閉塞・接続外れを確認し医師へ報告する。副作用は血圧低下・下肢のしびれや運動麻痺・尿閉
- 鎮痛を十分に図ったうえで早期離床と深呼吸・排痰を促すことが、術後合併症予防の基本である
参考: 医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.1 消化器』/日本手術看護学会 周術期看護テキスト
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について