第107回 看護師国家試験 午前 問91 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(56歳、男性)は、コンビニエンスストアの店長で自動車を運転して通勤している。不規則な生活が続き、ストレスが溜まることも多く、十分な睡眠がとれないこともあった。荷物を運ぶときに胸部の圧迫感が繰り返し出現し受診したところ、狭心症が疑われたため検査をすることになった。脂質異常症の既往がある。Aさんの運動負荷心電図検査(トレッドミル運動負荷試験)の結果(別冊No.7)を別に示す。 このときの心電図の所見で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 労作性狭心症では心筋の相対的虚血を反映し、運動負荷(発作)時にST低下がみられる。
労作性狭心症は冠動脈の器質的狭窄により、運動などで心筋の酸素需要が増えたときに供給が追いつかず、虚血を来す病態である。 虚血が生じている間は心内膜下心筋の再分極異常を反映して心電図上ST(水平型・下降型)低下が出現し、安静で虚血が解消すればSTは基線に戻る。 トレッドミル運動負荷試験は、この労作時の一過性ST低下を誘発して診断する検査であり、本問の別冊心電図でも発作(負荷)時のST低下が中心の所見となる。
他の選択肢は、狭心症以外の病態を示す所見である。 安静時の異常Q波や冠性T波は心筋梗塞の所見、QRS幅の拡大は脚ブロックなど心室内伝導障害の所見で、P波は心房の興奮を表すため虚血の指標にはならない。
ST低下とは
心電図のST部分が基線より下へずれること。心筋に流れる血液が足りていないときに現れる。
- 1
発作時はST低下がある。正解
労作(発作)時に心筋虚血を反映して一過性のST低下が出現するのが労作性狭心症の典型所見である。
- 2
発作時はP波が低下している。不正解
P波の低下は心房の脱分極に関する所見で、狭心症の心筋虚血を示す指標ではない。
- 3
安静時は異常Q波がある。不正解
異常Q波は心筋梗塞による貫壁性の心筋壊死を示す所見で、労作性狭心症そのものの所見ではない。
- 4
安静時は冠性T波がある。不正解
冠性T波は主に心筋梗塞後にみられる左右対称の陰性T波で、狭心症の安静時所見ではない。
- 5
安静時と発作時ともにQRS幅が拡大している。不正解
QRS幅の拡大は脚ブロックや心室内伝導障害を示すもので、狭心症の虚血所見ではない。
📚 混同しやすいので注意
虚血性心疾患は、心電図の変化が「いつ・どの波形に」出るかを入れ替えて問われる。病態と所見を対にして覚えよう。 運動負荷試験は、不安定狭心症・急性心筋梗塞の急性期・重症大動脈弁狭窄症・コントロール不良の心不全などでは禁忌である。
| 病態 | 心電図所見 |
|---|---|
| 労作性(安定)狭心症 | 労作時に一過性のST低下(水平型・下降型)が出現し、安静で回復する |
| 冠攣縮性(異型)狭心症 | 発作時(多くは夜間から早朝の安静時)にST上昇 |
| 急性心筋梗塞 | T波の増高 → ST上昇 → 異常Q波の出現 → 冠性T波(左右対称の陰性T波)と経時的に変化する |
| 陳旧性心筋梗塞 | 異常Q波の残存、冠性T波 |
参考: 日本循環器学会「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン」/医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.2 循環器』
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について