第107回 看護師国家試験 午前 問115 解説
📝 問題
次の文を読み115、116の問いに答えよ。Aさん(82歳、男性)。妻との2人暮らし。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準はランクJ。Aさんは搔痒感のために皮膚科を受診し、老人性皮膚搔痒症と診断され、抗ヒスタミン内服薬が処方された。身長165cm、体重55kg。Aさんの趣味は散歩で、毎日1km程度を歩いている。初診から1か月後、皮膚科の外来でAさんは「薬を飲み始めてから、口の中が渇いて食べにくい」と話した。 この状況から、Aさんに障害が起きていると考えられる摂食・嚥下の段階はどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 口渇(唾液分泌低下)により食塊形成が妨げられるのは、摂食・嚥下の準備期の障害である。
摂食・嚥下は、先行期(認知)・準備期(咀嚼と食塊形成)・口腔期(咽頭への送り込み)・咽頭期(嚥下反射)・食道期(食道通過)の5つに分けられる。 抗ヒスタミン薬の抗コリン作用による口渇は唾液分泌を減らし、咀嚼した食物を唾液と混ぜて飲み込みやすい食塊にまとめる働きを妨げる。 食塊形成は準備期に行われるため、障害されている段階は準備期である。
嚥下の5期は、訴えがどの期の障害を指すかという形でよく問われる。 「口が渇いて食べにくい」は唾液が足りないサインで、食塊をまとめる準備期に当たる。先行期・咽頭期・食道期は、唾液の不足では説明できない。
抗コリン作用とは
神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑える作用。口渇・便秘・尿が出にくい・目のかすみなどが副作用として現れる。
- 1
先行期不正解
先行期は食物を認知し口へ運ぶ段階で、口渇による食塊形成の障害とは対応しない。
- 2
準備期正解
準備期は咀嚼と唾液による食塊形成の段階で、口渇(唾液低下)による障害はここに該当する。
- 3
咽頭期不正解
咽頭期は嚥下反射により食塊を咽頭から食道へ送る段階で、唾液不足による食塊形成障害の段階ではない。
- 4
食道期不正解
食道期は食塊が食道を通過する段階で、口渇による準備期の障害とは対応しない。
📚 ここも一緒におさえておこう
摂食嚥下障害は、どの期が障害されているかと、その期に合うケアを組にして問われる。徴候とケアを対にして覚えよう。 薬剤性の口腔乾燥は抗コリン作用をもつ薬(抗ヒスタミン薬・三環系抗うつ薬・抗精神病薬・過活動膀胱治療薬など)で起こりやすく、高齢者では見逃されやすい原因である。
| 段階 | 障害されると起こること | 主なケア |
|---|---|---|
| ①先行期 | 食物を認識できない、食事に集中できない | 覚醒と姿勢を整える、食事環境の調整、声かけ |
| ②準備期 | 咀嚼できない、食塊がまとまらない(口腔乾燥・義歯不適合) | 口腔ケアと保湿、義歯の調整、まとまりやすい食形態 |
| ③口腔期 | 口腔内に食物が残る、送り込めない | 舌の運動訓練、一口量を少なく、送り込みやすい体位 |
| ④咽頭期 | むせ、湿性嗄声、誤嚥 | 頸部前屈位(顎を引く)、複数回嚥下、交互嚥下、とろみの付与 |
| ⑤食道期 | つかえ感、逆流 | 食後30分〜1時間は坐位を保つ、少量頻回 |
参考: 医療情報科学研究所編『老年看護学』/日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下の5期モデル
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について