第107回 看護師国家試験 午前 問110 解説
📝 問題
次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(76歳、女性)は、長女(46歳、会社員)との2人暮らし。5年前に2型糖尿病と診断され、血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。1か月後、Aさんと一緒に外来を訪れた長女は「今までインスリンの治療は母に任せてきましたが、母は眼が見えにくく、インスリンの量が多い日があったようです。母が自己注射を続けられるように、私も手伝えればと思います」と外来看護師に話した。外来受診時、Aさんに末梢神経障害の症状は認められず、手指の動きに問題はなかった。 Aさんがインスリン自己注射を行う上で、外来看護師が行う長女への助言で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 視力低下による過量投与を防ぐため、インスリンの量は長女が一緒に確認するよう助言するのが適切である。
Aさんは眼が見えにくくインスリン量を間違える日があったが、末梢神経障害はなく手指の動きにも問題がない。 注射の手技そのものはAさんが続けられ、困っているのは視力低下による単位数の読み取りと設定である。 この点だけを長女が一緒に確認すれば、Aさんの自立を保ったまま過量・過少投与を防げる。 本人の残存能力を活かした支援として適切である。
高齢者のセルフケア支援は、できることは本人に任せ、困難な部分だけを補うのが原則である。 血糖測定まで代わりに行うのは支援が過剰で、針をつけたままにすれば感染や薬液の漏れを招く。上腕は自己注射には扱いにくい部位である。
- 1
「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」正解
視力低下による単位設定の誤りを防ぐため、量を長女が一緒に確認する助言は本人の自立を保ちつつ安全を高め適切である。
- 2
「血糖測定は娘さんが代わりに行いましょう」不正解
血糖測定を長女が代行するのは過剰な支援で、Aさんができている部分まで奪ってしまう。
- 3
「注射の針はつけたままにしましょう」不正解
注射針をつけたままにすると感染や薬液漏れ・変質の原因となり、使用のたびに交換するのが原則である。
- 4
「注射の部位は上腕を選びましょう」不正解
上腕は自己注射では操作しにくく、通常は腹部などを選ぶ。
📚 ここも一緒におさえておこう
インスリン自己注射は、注射部位・針の扱い・保管・シックデイの対応が入れ替えて問われる。手順とその理由を対にして覚えよう。
- 注射部位は腹部(吸収が速く安定)が第一選択で、上腕・大腿・殿部の順に吸収が遅くなる。同じ部位の中でも2〜3cmずつずらして打ち、硬結(リポハイパートロフィー)を防ぐ
- 皮下注射で行い、注入後は5〜10秒待ってから針を抜く(薬液の漏れを防ぐため)
- 注射針は毎回交換し、使用後は専用容器に入れて医療機関に返却する
- 未開封のインスリンは冷蔵庫(2〜8℃)で保存し、使用中のものは室温で遮光保存する。凍結したものは使用しない
- シックデイ(発熱・下痢・食欲不振時)でも自己判断でインスリンを中止せず、水分と糖質をこまめに摂り、血糖を測って主治医に連絡する
参考: 日本糖尿病学会「高齢者糖尿病診療ガイドライン」/医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌』
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について