第106回 看護師国家試験 午後 問95 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(79歳、女性)。自宅の玄関で転倒し、救急外来で第12胸椎の圧迫骨折と診断され、安静目的で入院した。 既往歴:5年前に大腿骨骨折。 現病歴:2年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉病を発症。記憶障害があるが、失認、観念運動失行および失語はなし。 生活歴:要介護1。同じ敷地内に住む長男夫婦は仕事をしている。ADLは自立。 入院後8日、理学療法室での訓練が始まった。Aさんはこわばった表情で訓練を受けていた。Aさんは、以前は通所リハビリテーションを利用していたが、人が多い場で落ち着かなくなることがあり、入院前には小規模多機能型居宅介護事業所を利用していたことが家族からの情報で分かった。翌日、理学療法士が「理学療法室に行きましょう」と病室に迎えに来たところ、Aさんは「行きたくない」と嫌がった。 このときのAさんに対する看護で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 人の多い場が苦手なAさんには、病棟でのリハビリテーションを提案するのが最も適切である。
Aさんが嫌がっているのは、リハビリテーションそのものではなく人の多い場所である。通所リハビリテーションでも落ち着かなくなり、入院前は小規模多機能型居宅介護事業所に通っていた。 慣れた病棟で訓練を行えば、苦手な場面を避けたまま続けられる。認知症のある人のケアでは、本人を場所に合わせるのではなく、場所を本人に合わせる。慣れた環境のほうが、もっている力を発揮しやすい。
残る3つは、嫌がる理由に届いていない。 看護師が付き添っても、理学療法室が人の多い場所であることは変わらない。 再転倒を予防する必要性の説明は、記憶障害のあるAさんには残りにくい。 小規模多機能型居宅介護事業所の利用は退院後の話で、いま始まった訓練の代わりにはならない。
小規模多機能型居宅介護とは
同じ事業所で通い・訪問・泊まりを組み合わせて受けられる介護保険のサービス。なじみの職員が続けて関わるので、認知症のある人が落ち着いて過ごしやすい。
- 1
看護師が理学療法室まで付き添う。不正解
付き添えば安心して行けるように見えるが、理学療法室そのものが苦手な場所である。人の多さは付き添いでは変わらない。
- 2
病棟でのリハビリテーションを提案する。正解
病棟なら人が少なく、Aさんが慣れた場所で訓練を続けられる。環境を本人に合わせる工夫である。
- 3
Aさんに再転倒を予防する必要性を説明する。不正解
説明して納得を得る方法は、記憶障害のあるAさんには残りにくい。嫌がる気持ちの理由にも触れていない。
- 4
小規模多機能型居宅介護事業所の利用を勧める。不正解
小規模多機能型居宅介護は退院後に使うサービス。入院中のリハビリテーションの代わりにはならない。
📚 ここも一緒におさえておこう
認知症のある人がケアを嫌がる場面では、行動そのものではなく理由を探す形で問われる。「なぜ嫌なのか」を入院前の暮らしと結びつけて考えよう。
- 拒否の背景には痛み・疲れ・不安がある。まわりの刺激が強すぎることも原因になるので、取り除けるものから探す
- 入院前の暮らし方は家族からの情報で分かる。使っていたサービス・生活のリズム・慣れた場所をケアに活かす
- リハビリテーションは日常の動作(トイレまで歩く・着替える)に組み込むと続けやすい
参考: 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(厚生労働省)/医療情報科学研究所編『老年看護学』関連資料
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について