第106回 看護師国家試験 午前 問118 解説
📝 問題
次の文を読み118、119の問いに答えよ。Aさん(89歳、女性)は、認知症と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男(66歳、未婚)との2人暮らし。Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。Aさんは「家事は私の仕事だ。息子にも他人にも任せられない」と言い、夕方になると、歩いて5分程度のスーパーマーケットへ買い物に行くことが長年の習慣となっている。最近、夜になっても帰宅せず、長男が探しに行くとスーパーマーケットから離れた公園のベンチに座っていることが数回あった。長男は訪問看護師に「母は私が後をついてきたと思い込んで怒るんです。このままでは心配です」と相談した。 看護師が長男へ助言する内容で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 荷物を持つという理由をつくって買い物に同行することを勧める。
Aさんは「家事は私の仕事だ」と話し、夕方の買い物を長年続けてきた。 認知症高齢者の日常生活自立度はランクⅡbで、まだ自分で出かけられる。 最近は帰り道が分からなくなり、公園のベンチで長男に見つかることが数回あった。 長男が後をつけると怒るのは、見張られていると受け取っているためである。
荷物を持つという理由なら、付き添う側にも自然な役目ができ、Aさんは見張られていると感じずにすむ。 買い物という役割も長年の習慣も続けたまま、帰り道の安全を守れる。
残る3つは、Aさんの役割や習慣を取り上げることになる。 公園で待っていても、行き帰りの道すじは見守れない。 買い物をホームヘルパーに任せると、Aさんが自分の仕事だと言っている家事を手放すことになる。 買い物をやめるよう話すことは、長年の習慣と生活の張りを断つことになる。
認知症高齢者の日常生活自立度とは
認知症の人がどのくらい自立して暮らせるかを表す区分。ランクⅡは、目を離すと支障が出るが、誰かが注意していれば自立できる段階をさす。
- 1
「先に公園で待っていてはどうですか」不正解
Aさんが毎回その公園へ向かうとは限らない。守りたいのは家と店を行き来する道すじのほうで、公園で待っていても見守れない。
- 2
「ホームヘルパーの利用をお勧めします」不正解
買い物を人に任せると、Aさんが「私の仕事だ」と話している家事を取り上げることになる。
- 3
「Aさんに買い物はやめるよう話しませんか」不正解
長年の習慣をやめるよう話しても納得は得られず、外出の機会と生活の張りを失わせる。
- 4
「荷物を持つという理由で同行してはどうですか」正解
荷物を持つという自然な理由があれば、見張られていると感じさせずに付き添える。買い物という役割を続けたまま、帰り道の安全も守れる。
📚 国試でよく狙われるところ
認知症の人が歩き回る(徘徊)場面では、止める選択肢ではなく、続けられる形を探す選択肢が正答になりやすい。理由を探してから手を打つ、と覚えよう。
- 歩き回る行動には本人なりの目的がある。行き先や不安を聞き取り、安全に続けられる方法を考える
- 否定・説得・叱責をしない。自尊心が傷つくと、かえって行動が激しくなる
- 靴や衣類に名前と連絡先を書く、近所の店や民生委員に事情を伝えるなど、地域で見守る仕組みを用意する
参考: 厚生労働省『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』/医学書院『系統看護学講座 在宅看護論』
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について