第105回 看護師国家試験 午後 問117 解説
📝 問題
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aさん(58歳、男性)は、妻(55歳、会社員)、長女夫婦および生後5か月の孫の5人で暮らしている。頸椎の後縦靱帯骨化症と診断され椎弓形成術を受けた。リハビリテーション病院に転院し2か月前に退院した。退院時から週1回の訪問看護を受けている。現在の症状は、下肢のしびれ、知覚鈍麻、筋力低下、上下肢の痙性麻痺および膀胱直腸障害である。移動は車椅子で、食事はリハビリテーション用のフォークを使用して座位で摂取している。排泄は家族に見守られながら尿器とポータブルトイレとを使用し、自分で行っている。 ある日、Aさんに軽度の歯肉出血および歯肉の腫脹がみられるようになった。疼痛はない。訪問歯科診療を受け、口腔ケアを徹底するよう促された。リハビリテーション病院に入院していたときは、自助具を利用して口腔ケアの練習をしていた。退院後は妻が口腔ケアを介助していたが、最近は仕事の帰りが遅く、Aさんは妻を待てずに寝てしまうと言う。また、Aさんは育児で疲れている長女には頼めないと話す。 看護師のAさんへの提案で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
5
💡 解説
✅ 自助具を使ってAさんが自分でできる口腔ケアの方法を検討するのが最も適切である。
Aさんに歯肉出血と腫脹が出て、口腔ケアの徹底を促された。歯肉の出血と腫れは口の中の細菌が増えているしるしで、放っておくと誤嚥性肺炎の危険も高まる。
妻の帰りは遅く、長女には頼めないとAさん自身が話している。人に頼む形のままでは、妻を待てずに眠ってしまう日が続く。 Aさんはリハビリテーション病院で自助具を使った口腔ケアを練習しており、自分でできる方法を整えれば生活時間に合わせて毎日続けられる。 歯ブラシの柄を太くする、手に固定できるホルダーを使う、電動歯ブラシに替えるなど、いまの手の動きに合う道具を一緒に選ぶ。
残る4つは、いまの生活に合わない。日中だけのケアでは、唾液が減って細菌が増えやすい就寝前のケアが抜ける。 長女に頼むことは、Aさん自身が望んでいない。 就寝時刻を遅らせると生活のリズムが崩れ、疲労が強まる。 妻の実施時間を検討しても、帰りが遅いという事情そのものは変わらない。
自助具とは
手や腕の動きが不自由でも自分で動作ができるように工夫された道具。柄を太くした歯ブラシやスプーン、手に固定するホルダーなどがある。
- 1
日中の口腔ケアを徹底する。不正解
日中のケアも大切だが、唾液が減って細菌が増えやすい就寝前のケアが抜けたままになる。
- 2
長女に口腔ケアを依頼する。不正解
Aさん自身が、育児で疲れている長女には頼めないと話している。本人の意向に反する提案になる。
- 3
就寝時刻を遅くするよう提案する。不正解
妻の帰宅を待って夜ふかしすると、生活のリズムが崩れて疲労が強まる。ケアに合わせて生活を変える形になっている。
- 4
妻が夜に実施できる時間帯を検討する。不正解
妻は仕事の帰りが遅く、時間帯を検討しても事情そのものは変わらない。介護する家族の負担も増える。
- 5
Aさんが自立してできる方法を検討する。正解
自助具を使った練習をしてきた経験がある。自分でできる形に整えれば、Aさんの生活時間に合わせて毎日続けられる。
📚 ここも一緒におさえておこう
在宅の援助は、本人ができる形に整えるのが先で、足りないところを制度でおぎなう。この順番のまま問われる。
- 道具の工夫で本人ができる範囲を広げられないかを最初に検討する
- 40〜64歳でも特定疾病にあたる病気なら介護保険のサービスを使える。後縦靱帯骨化症は特定疾病に含まれる
- 通院が難しい人には訪問歯科診療があり、歯科衛生士による訪問口腔ケアも受けられる
参考: 系統看護学講座 在宅看護論/介護保険法(特定疾病)
出典:「第105回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について